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日本 「安衛法」に基づくリスクアセスメント義務とGHS適用範囲を拡大予定

 厚生労働省は12月24日、労働政策審議会建議「今後の労働安全衛生対策について」(以下「建議」という)を公表しました。

 日本では、職場の化学物質が「労働安全衛生法」(以下「安衛法」という)により管理されることになっています。今回公表された資料の中で、現行「安衛法」に基づく化学物質管理に対する建議は下記2点の内容になります:

 1)一定の危険性・有害性が確認されている化学物質は事業者にリスクアセスメントを実施させる

 2)容器・包装へのラベル表示を義務づける対象物質を拡大

 「安衛法」によりますと、高いリスクが明らかになった化学物質は特別規制の対象となり、GHS実施義務が課せられています。特別規制の対象以外のものについては、リスクアセスメントやGHSの実施などは努力義務が求められています。しかし、努力義務が課せられている化学物質は、昨年「胆管がん事件」が発生して初めて、その重要性が認識されました。厚生労働省は、昨年3月から印刷事業場の労働者等から胆管がんによる労災請求が相次いで寄せられたことをきっかけに、全国規模で調査を始めました。その結果、特別規制の対象ではない化学物質1,2-ジクロロプロパンが事件の要因であると判明しました。2013年3月付けで合計16人が労災認定されました。 

 「胆管がん事件」の教訓を踏まえ、日本政府は専門家や政府関係者などを集め、特別規制の対象ではない化学物質について検討を重ねて提案を行いました。

 「一定の危険性・有害性が確認されている化学物質は事業者にリスクアセスメントを実施させる」について

 厚生労働省が発表した「胆管がん事件」に対する専門家検討会報告書で、特別規制の対象ではないものの、労災を引き起こした化学物質は1,2-ジクロロプロパンの他にもあるという問題が指摘されました。統計によりますと、慢性障害による疾病の約3割が、それぞれ特別規則の対象とはなっていない化学物質によるものとなっています。こうした特別規制の対象ではない化学物質は、使用や作業方法によって健康障害を惹起する恐れがあります。現在、法律上でこれらの化学物質に対する強制的な規定がないため、関連企業はリスクアセスメントの重要性を十分に意識しておらず、労働者を保護するための適切な措置も講じられていません。

 上記問題に対して、専門家及び政府関係者は、人に対する一定の危険性・有害性が明らかになっている化学物質について、これらによる労災を未然に防ぐため、事業者に自らリスクアセスメントを実施させ、適切なリスク低減措置を講じさせるよう仕組みを見直す必要があると指摘しました。また、事業者が確実にリスクアセスメントを実施するためには、化学物質の危険性または有害性に関する情報を入手する必要があり、SDSや情報伝達に関しても改めて検討しなければならないという提案が挙げられました。

 「容器・包装へのラベル表示を義務づける対象物質を拡大」について

 「安衛法」第57条に、政令に定める化学物質(約110物質)を容器等に入れて譲渡又は提供する者に対して、容器等に表示しなければならないことが、同法第57条の2に、政令に定める化学物質(上記約110物質を含み640物質)を譲渡又は提供する者に対して、SDSを交付しなければならないことが、それぞれ定められています。また、安衛則第24条の14及び第24条の15に、上記の表示又はSDSの交付が義務となっている化学物質以外のすべての危険有害な化学物質を対象に、譲渡又は提供する者に対して、容器等への表示及びSDSの交付を努力義務として定めています。しかし、努力義務となっている化学物質はSDSの交付が強制的ではないため、企業から十分に重要視されていませんでした。従って、専門家と政府関係者は、「安衛法」第57条の2に基づくSDSの交付が義務付けられている640物質までに拡大すると提案しました。具体的なイメージは下図のようになります:

 (注:上図は「労働政策審議会安全衛生分科会報告書」から抜粋) 

 また、「建議」によりますと、適用範囲を拡大する案が通過された場合、上記物質を含有する混合物については、ラベルに表示すべき成分の種類が大幅に増加し、容器などに貼るラベルの絵表示などが全般的に縮尺が小さくなり、労働者に危険有害性の情報が伝わりにくくなる恐れがあります。そのため、ラベルの成分の表示に対しても、労働者に情報がわかりやすくなるよう見直す必要があります。

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