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PFAS製造者は現実から逃げるかわりに、どう対応すべきか?

 なぜ一部のPFAS関連企業は、巨額の資金を投じてこの有害で論争の的となっている化学物質を生産し続けるために反対意見を唱え続けていますか。多くの企業は、従来のやり方に固執し変わろうとしないという思い込みが強いからでしょう。一方、PFASを含まない代替品を開発することにより、事業の将来性を確保することに向けて取り組みを始めた企業もあります。

 有害な「永遠の化学物質」とも呼ばれるPFASは長い間、社会の中でフライパンから先端兵器の原料まで、数え切れないほどの製品に数多く使われています。PFAS関連製造者に言わせれば、当該物質は現代社会に不可欠なものです。最近、「PFASはグリーン転換に必要であり、これらの化学物質を使わなければ気候目標を達成できない」との見解を示す製造者が多くなりました。

 現在のところ、PFASは社会にとって不可欠な一部の用途について代替手段がまだないということは事実ですが、必要不可欠な用途に使用されているものは、世界のPFASの製造量全体のごく一部に過ぎません

 政策的規制の状況が着実に変化する中、PFASの製造者は、これらの有害な化学物質をほとんど規制しないままにしておくために取り組んでいます。しかし、PFASはもはや奇跡の化学物質と見なされておらず、人々や地球に悪影響を及ぼしているというイメージが強くなっています。

 当該企業はPFASの製造から撤退する代わりに、新規・既存施設へ多額の投資を行っています。

 米国における訴訟事件及び州レベルのPFAS規制は、欧州におけるPFASの全面的な禁止に向けた提案とともに、これらの化学物質の規制状況に関する完全なる変化を迎えつつあります。それに加え、PFASの健康と環境への悪影響に対する消費者の意識は、急速に高まっており、その製造及び使用に関連する財務リスクに対処するため、数兆ドル規模の投資家ネットワークも形成されています。

 では、PFASの製造者はこの新しい現実にどのように対処しているのでしょうか?一部の製造者は、事業戦略が従来どおりでなんら変わったところがないのが最善の道であると考え、変化を拒んでいるようです。

PFASの製造量を拡大する企業があり

 米国化学会社のChemours(ケマーズ)を例として挙げてみます。同社はPFASの製造から撤退する代わりに、新規及び既存施設に多額の投資を行い、PFASの生産を拡大しました。しかし、Chemours(ケマーズ)社は、これらの有害な化学物質を封じ込め、リサイクルし、監督管理するための対策にかかる費用の大幅な負担増も強いられています。

 たとえば、PFASがその周辺の河川に流れ込まないように、米国にある施設に深さ30メートルにも及ぶ壁づくりに1億ドル以上を費やしました(当該施設から生じた汚染により、周辺水路はすでに汚染されている)。また、オランダにおける工場周辺の汚染に対処するため、同社は何百万ポンドものPFAS含有廃棄物を「リサイクル」のために米国に輸送すると約束しました。しかし、公衆抗議、及び事実上リサイクルできる廃棄物の量に関する不正確な情報により、米国環境保護庁(EPA)はこの試みを中止させました。

 その他、国際連合人権理事会は、書簡をChemours(ケマーズ)社に送り、PFASの製造に関連する「人権侵害と虐待」を説明しました。

 総じていえば、(失敗に終わった)リスク管理対策に何億ドルも費やしながら、「永遠の化学物質」を製造し続けることは、一つの方法であると言えるでしょう。

より安全な代替品に投資する企業もあり

 すべてのPFAS製造者が同じというわけではありません。別の道を歩むことを決めた企業もあります。PFAS製造者である3M社は、2025年末までにPFAS製造から完全撤回し、同社の全製品でPFASの使用中止に取り組むことを決定しました。3M社は公告で、「PFASに依存しない世界に向けて技術革新に取り組む」と述べました。

 これは、より安全な代替品を開発することを意味します。多くのPFAS関連企業は、この問題に取り組み始めています。例えば、DIC株式会社と三菱ケミカル株式会社は、半導体製造用界面活性剤と、スマートフォン及びパソコンで使用できる難燃性をもつプラスチック材料を開発しました。これらのいずれもPFASの存在が示されていません。

 新しいグリーン・テクノロジーを利用して安全な代替品を開発することにより、事業の将来性を確保します。

 PFASよりも安全な代替物質を見つけることに投資するのは、これらの日本の化学会社だけではありません。ここ数年、ヨーロッパの化学会社であるSolvay(ソルベイ)社とArkema(アルケマ)社も、フッ素を含まない界面活性剤を開発しています。その他、旭化成株式会社は、PFASを含まないプロトン交換膜(PEM)燃料電池の代替品を提供するスタートアップ企業であるIonomr Innovationsと提携することにより、別のアプローチで事業の将来性を確保しています。

 では、次のどちらの選択肢を選びますか。

選択肢1:高価な壁や弁護士に会社の経費を使いながら(そして人権を侵害)、PFASの製造を続けること;

選択肢2:新しいグリーン・テクノロジーを利用して安全な代替品を開発することにより、同じ経費を使って事業の将来性を確保すること。

(注意:この記事に記された内容や意見は、著者の個人的見解です。)


 本記事の著作権は、2002年に設立された国際化学物質事務局(ChemSec)に帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とChemSecとの間で合意がなされています。ChemSecは、有害化学物質をより安全な代替品に置き換えることを提唱し、独立した非営利団体として活動しています。転載元:ChemSec

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