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国連 塗料中の鉛の排除に関する技術ガイドラインを公布

 国連環境計画(UNEP)は、比較的低いレベルの鉛のばく露でも、深刻かつ不可逆的な神経損傷や行動上の問題の増加を引き起こす恐れがあると指摘しています。ただし、塗料の世界市場の約58%を占める中小企業(SMEs)をはじめとする塗料メーカーは、依然として鉛含有塗料の生産を続けています。そして、建設・住宅市場の拡大に伴い、塗料市場の拡大も予想され、国際社会が結束した対応を行わない限り、鉛含有塗料の使用は世界中で増加傾向となる見通しです。 

 それに対し、国連環境計画(UNEP)は中小の塗料メーカーが塗料を改良し、塗料中の鉛を段階的に廃絶することを支援するため、地球環境ファシリティ(GEF)と共同で「鉛含有塗料改良技術ガイドライン」(以下、「ガイドライン」という)を公表しました。本ガイドラインに基づいたパイロットプロジェクトは、既に中国・インドネシア・コロンビア等の中小企業で実施されました。これにより、改良の有用性が実証され、下記の調査結果と推奨事項がまとめられました。

順番主な調査結果推奨事項
1鉛系顔料は、よく溶剤系塗料と水性塗料に使用される。鉛含有塗料に関する法規制(案)を作成する際、できるだけ溶剤系塗料と水性塗料も含めて対象範囲とする必要がある。
2一部の小規模企業は、塗料性能試験とスケールアップに必要な設備を整えていない。グラインダー(grinding equipment)の不足を解消するためには、顔料ペーストを使用することができる。
3供給業者は小さな市場への商業的関心が低く見える。その結果、当該場所で代替顔料の入手は困難である。見本市や中小企業が参加する会議などを通じて、 代替品の供給業者が小さな市場でも原料を供給するよう奨励する。
4すべてのパイロットプロジェクトの参加者は、代替品の供給業者による技術サポートの提供が重要であることに賛成した。改良前に技術サポートについて供給業者との会議を開くことは、改良プロセスに関する理解を深め、適切な代替品の選択および効率的な改良を促進することに役立つ。
5場合によって、改良のコストが異なっている。鉛代替原料の価格が低くなり、コストが低減される場合もあれば、塗料価格の水準が大幅に上昇する場合もある関係企業は改良に伴うコストの見積りを行う必要がある。

 この前、UNEP及び世界保健機関(WHO)は、塗料に含まれる鉛の段階的廃止に取り組む政府・学界・非政府組織(NGO)・塗料業界を招き、自発的な組織である「鉛含有塗料廃絶同盟(LPA : Lead Paint Alliance)」を設立しました。当該組織は、塗料に90mg/kg以下の鉛を使用することを推奨します。この推奨値に対して、今回のガイドラインは「可能な限り最高の健康保護レベルを達成し、技術的に実現可能である」と再び強調しました。

 今後、UNEPが指摘した通り、鉛含有塗料を規制する国の増加とともに、塗料メーカーは同ガイドラインを基に、鉛を含む塗料の改良および市場の拡大に向けた取組を実施することが勧められます。

羅 雪純(ラ セツジュン)
ChemLinked Japan編集
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