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繁文縟礼について――業界からの声

 中国の化学物質管理体制の複雑さは、当局や業界に深刻な問題をもたらしています。新しい規則は展開支援文書や実施マニュアルが揃っていないまま発表されるケースが多く発生しています。その結果、企業は明確な実施ガイドがないため混乱してしまい、新しい政策や法規を実際の生産に落とし込むことも難しくなってしまいました。

 今年上海で開催されたグローバル化学物質法規年次大会で、筆者は業界の有力な人物に取材するチャンスがあり、中国法律の繁文縟礼についての感想や意見などを伺いました。また、彼ら自身の経験と規則に対する有効な対応方法など貴重な意見も拝聴することができました。

不注意による遵守障害を防止

 2012年より施行された「危険化学品登録管理弁法」(国家安全生産監督管理総局令第53号)によって、国家安全生産監督管理総局化学物質登録センターは、全国の危険化学物質の登録、管理などに関する事項を担当することになりました。登録センターの統計によりますと、2013年前半期、危険化学物質登録証を取得できた企業は約2000社ありました。その中で発生した問題は下記のようにまとめられます:

 ・ 安全技術説明書(SDS)、ラベルの表示内容不足

 ・分類、ラベルの危険性説明が不適当

 ・製品の規格不足

 ・緊急通報用電話番号の不正確

 ・記入内容が不十分

 ・空欄の過多

 登録センターの副処長で、青島諾誠化学品安全科技有限会社の副総経理張宏哲博士は、届出資料において実際の試験データがない混合物については、必ずデータの計算式または導出方法を明記しなければならない。製品は関連する国家標準がない場合、届出資料にあらゆる国際標準、業界標準、企業標準の記入が認められると明らかにしました。それ他の登録における注意事項は公文書をご参照ください。

積極的に監督管理部門に協力

「化学品物理的危険性鑑定・分類管理弁法」は2013年9月より施行されました。「弁法」により、製造または輸入される化学物質に対して全面調査及び物理的危険性検証を行い、物理的危険性が不明確な化学物質に対して鑑定及び分類を行わなければなりません。しかし、この管理方法の実施について、肝心な部分はまだ不足しており、鑑定及び分類における仕組みに対して更に改善しなければなりません (Chemlinkedニュース) 。

 この問題に対し、ハンツマン社の法規/製品登録・申告専門家暨荀鶴氏は、サプライヤー、またはQCsからのデータでもよいので、企業はできるだけ詳しい信頼性があるデータを監督管理部門に提出しなければならない。政府より先進的な技術を有し、審査結果に疑問を抱く場合、企業は関係当局と深くコミュニケーションを取ったり、話し合いしたりすべきであります。お互いの理解とサポートは合意を形成させ、更に化学物質を適切に分類させ、大元からリスクを管理することに役に立つと提案しました。

常に法規の新動向を把握

 硬直的かつ煩雑な処理体系をもつ政府機関より、企業の方がより柔軟です。規則を遵守する前提に、見通しがある戦略家は今後益々厳しくなる法律環境下で、化学物質を生産、使用または運営する際に直面するリスクや障害などを予測し、早期に回避または適正な措置を考えておくと考えられます。 インテルの範世光博士は、インテル購買部の原則の一つが「現行法規を理解した上で将来の潜在的な監督管理及び規制を明確すること」であると述べました。

 「2011年台湾食品事件」及び「2012年有名国産酒可塑剤混入事件」は中国で大きな騒ぎを引き起こしましたが、近日に発表された「2013年版 危険化学物質名録」に、事件の核心であったフタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)の姿がありませんでした。それに対し、各業界が大きな関心を示しています。不法可塑剤を用いた食品のほかに、汚染された食物、飲用水、空気及び皮膚接触で摂取されたDEHPもエストロゲンによって人体健康に悪影響を及ぼしています。アメリカ食品医薬局は既にDEHPを含む材料を用いる油脂または脂肪を含む食品の包装を禁じています。アメリカ環境保護庁も飲用水中におけるDEHPレベルは6 ppb以下に定めています。また、アメリカ労働安全衛生庁の規則によって、作業場の空気中のDEHPのばく露値は5 mg/m3以内に抑えられています。EU REACH規則において、DEHPは高懸念物質として指定され、かつ2015年により全面的に禁止されることになります。一部の国と地区は玩具製品でDEHPの使用が禁止されています。中国はDEHPに対する監督管理が非常に緩いとして、各方面から指摘の声があがっています。今後、DEHPに対する管理は益々厳しくなることが予測されます。従って、関係する生産者とサプライヤーは早期に対応できるよう、DEHPに関する規則の最新動向を常に把握する必要があります。

持続可能性は目先の利益よりはるかに重要

 市場の発展及びグローバル科学技術の前進によって、化学物質の監督管理体制は特定地域に限られたり、硬直的で変化のないものではなくなります。安全で環境に優しい製品でしか市場を取ることができません。現在、環境配慮製品を選択する消費者が徐々に増加しており、政策も環境、健康、安全を優先にし、行政的・法律的な手段によって強制的に産業構造の転換を図っています。企業は、不断の革新により、持続可能性の方針を徹底させ、「人類ただ一つの家」を守ってこそ、長期的利益を保障することができます。

欧陽結清
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