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中国 RoHS規制に関する国家標準を強制性へ移行する予定
提案された強制性国家標準は、「GB/T 26572-2011」および「SJ/T 11364-2014」を統合する予定です。

 2024年11月19日、中国工業と情報化部(MIIT)は、8つの強制性国家標準(意見募集案)についてのパブリックコメント募集を開始しました。この中には「電気電子製品有害物質制限使用要件」(GB XXXX—XXXX)も含まれています。意見提出の締切は2025年1月18日です。

背景

 中国のRoHS規制は「電気電子製品有害物質制限使用管理弁法」(中国RoHS 2)の法的枠組みに基づいています。推薦性国家標準である「GB/T 26572-2011 電気電子製品における規制物質の規制量要求」と推薦性業界標準である「SJ/T 11364-2014 電気電子製品有害物質制限使用標識要求」が現在の主要な下位標準です。

 しかし、上記両標準の”推薦性”と管理弁法の”強制性”と一致していないこと、加えて管理弁法の中で上記両標準が弁法の下位標準であることが明確に示されていないことから、運用中に問題が生じ、弁法の実施に影響を与えています。特に、企業は両標準の義務性を理解できないケースが多発し、現場から戸惑いの声が多く挙げられました。

新国家標準案のポイント

  • 既存標準の統合

新国家標準案では、GB/T 26572-2011およびSJ/T 11364-2014を1つの強制性GBに統合し、中国RoHS 2の義務的な性質に合わせています。また、産業発展に対応するための技術要件も更新されています。

  • 制限有害物質の拡大

制限される有害物質の種類を6種類から10種類に拡大し、EU RoHS指令(2011/65/EU)と一致させています。これは2024年6月に公表されたGB/T 26572-2011の第1次修正票とも一致しています。制限される物質と対応する濃度限度は以下の通りです:

制限物質濃度限度
鉛(Pb)≤ 0.1%
水銀(Hg)≤ 0.1%
六価クロム[Cr(VI)]≤ 0.1%
ポリ臭化ビフェニル(PBB)≤ 0.1%
ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)≤ 0.1%
カドミウム(Cd)≤ 0.01%
フタル酸ジイソブチル(DIBP)≤ 0.1%
フタル酸ジブチル(DBP)≤ 0.1%
フタル酸ブチルベンジル(BBP)≤ 0.1%
フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)≤ 0.1%
  • 検査標準の導入

電気電子製品における有害物質の測定にはGB/T 39560シリーズを適用標準として規定。

  • デジタル表示方法の導入

QRコードや画面表示などのデジタル表示方法を導入し、RoHS準拠コストを削減。

  • 適合性評価文書の強化

高リスク部品に関する試験報告書を添付するよう要求。標準案の附属書Bには、高リスク部品の詳細が記載されています。

連番製品名高リスク部品
1冷蔵庫圧縮機部品、各種PCBA部品、断熱材、シールガスケット、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)
2エアコン圧縮機部品、各種PCBA部品、断熱材、シールガスケット、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)
3洗濯機モーター部品、各種PCBA部品、シールガスケット、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)
4電気温水器ヒーターバー部品、各種PCBA部品、断熱材、各種金属管部品、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)
5プリンター電源部品または電源アダプターのPCBA部品、データ処理用PCBA部品、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)
6複写機電源部品または電源アダプターのPCBA部品、データ処理用PCBA部品、各種ケーブル被覆、スキャン部品、ディスプレイ部品(ある場合)
7ファックス機電源部品または電源アダプターのPCBA部品、データ処理用PCBA部品、各種ケーブル被覆、スキャン部品、ディスプレイ部品(ある場合)
8テレビ電源部品または電源アダプターのPCBA部品、データ処理用PCBA部品、各種PCBA部品、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品
9モニター電源部品または電源アダプターのPCBA部品、データ処理用PCBA部品、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品
10個人用コンピュータマザーボードPCBA、電源部品PCBA、ハードディスク、メモリ、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)、バッテリー部品(ある場合)
11携帯電話各種PCBA部品、ディスプレイ部品、バッテリー部品、各種ケーブル被覆
12固定電話各種PCBA部品、各種ケーブル被覆、ディスプレイ部品(ある場合)、バッテリー部品(ある場合)
注釈:PCBA(Printed Circuit Board Assembly)は「プリント回路基板の組立」の略称です。電子部品、コネクタ、プラグイン、デジタルロジックゲート、マイクロコントロールユニットなどをプリント回路基板上に組み込み、さまざまなはんだ付けや接続工程を経て、完全な電子機能モジュールを形成します。
  • 検査規則の強化

電気電子製品の製造過程においてRoHS規制の遵守を継続的に確保するため、検査規則を強化。

移行期間

 新たな国家標準は、公表から1年後に発効する予定です。一方で、「GB/T 26572-2011」の第1次修正票は2026年1月1日に施行される予定です。「SJ/T 11364-2014」の改訂については現在承認段階にあり、2024年12月に発表され、2025年12月に施行される見込みです。当局は、「GB/T 26572-2011」の第1次修正票および「SJ/T 11364-2014」の改訂版への対応を、業界が新たな国家標準に備えるための実践的な機会と捉えています。

新国家標準案の原文はこちらからご確認することができます。

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杜業翔(ト ギョウショウ)
法規制コンサルタント/Chemlinked Japan編集
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