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フッ素樹脂に関する三つの神話、打ち破れ

 フッ素樹脂を規制対象外とする一般的な議論のポイントをいくつか取り上げて検討しました。

 テフロンインフルエンザとも呼ばれるポリマーフューム熱をご存じですか。これは、PTFE(テフロン)が450℃以上に加熱された時に発生するフュームによって引き起こされる胸苦しさ、咳及び頭痛の症状です。この病気は1965年に発表した科学論文に報告されました。

 この医学用語は、プラスチック業界はフッ素樹脂が安全であり、PFAS規制から除外されるべきと主張することの不合理さを浮き彫りにしたと言えるでしょう。

 次は、フッ素樹脂を規制対象外とする一般的な議論のポイントをいくつか取り上げ、検証を行ってみます。

1.フッ素樹脂は他のPFASとは異なること

 PFASは膨大な種類がある化合物群であり、その化学構造から4,700600万種類あると推定されています。これらの物質はいくつかの方法により分類することができます。もちろん、これほど多くの物質を一括して制限する提案(以下、「制限案」という)は異例のことです。

 ただし、この多様性のあるグループに該当する物質の共通点は、非常に残留性が高いことです。フッ素原子と炭素原子との強固な共有結合があることから、フッ素樹脂を含むすべてのPFASは難分解性を持っています。

 非常に類似した化合物数が膨大であることも、PFASが「残念な代替」になる典型的な事例と言えます。あるPFASが問題視されると、他のPFASに取って代わられます。PFOAがGenXに置き換えられたことはその一例です。実は、すべてのPFASは「永遠の化学物質」です。これは、フッ素樹脂を含むすべてのPFASを1つのグループとして規制する根拠となっています。

2.フッ素樹脂の使用は安全であること

 フッ素樹脂は「使用段階」で毒性のない物質であると主張する人もいます。これは、ふっ素樹脂が常に適切な状態で使用されるという前提の上に成り立っています(例えば、テフロン加工のフライパンを過熱する人はいないこと)。

 しかし、最近、使用段階での問題として認識されてきていることは、マイクロプラスチックの排出です。

 また、使用段階で問題がないとしても、フッ素樹脂の製造において有毒なPFASが大量に排出されます。PFAS汚染が最も深刻な場所の多くは、フッ素樹脂の製造現場の近くにあります。

 その他、「廃棄物処理」の段階も大きな問題になります。フッ素樹脂を焼却すると、強力な温室効果ガスを含む有毒なPFASが排出されます。長期にわたる埋立地も問題です。使用済み製品については、まだ多くのことが解明される必要がありますが、循環型経済を真剣に考えれば、フッ素樹脂を使用する余地はありません

 「今後、製造からの排出及び廃棄物に関する問題は解決される予定がある」という多少あいまいな約束がされています。しかし、制御不可能なあらゆる側面を考慮すると、この約束は非現実的です。したがって、このような革新的な技術と資源をより安全な代替品の開発に投入することをお勧めです。

3.フッ素樹脂なしではグリーントランジション達成できないこと

 最近、産業界からの論説によると、フッ素樹脂は持続可能な未来に不可欠であるということです。ソーラーパネルや医療機器へのフッ素樹脂の使用は、例として挙げられています。

 しかし、フッ素樹脂の用途・生産量を見ると、生産量の大部分は持続可能な先端技術革新又は医療製品とは何の関係もない一方、8%のみは重要な用途に使われています。

 ごくわずかな特定用途を理由にフッ素樹脂を規制対象外とすることは、合理的でないと言えます。そして、今回の制限案には、これらの用途及びその他の用途の免除規定もあります。免除規定は、現在進行中の代替品の技術革新に余分な時間を与えるものです。

注意:この記事に記された内容や意見は、著者の個人的見解です。


 本記事の著作権は、2002年に設立された国際化学物質事務局(ChemSec)に帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とChemSecとの間で合意がなされています。ChemSecは、有害化学物質をより安全な代替品に置き換えることを提唱し、独立した非営利団体として活動しています。転載元:ChemSec

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