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PFAS規制案:最近の更新から見える重大な5つの問題点
 欧州化学品庁(ECHA)は最近、EUのユニバーサルPFAS規制案を更新しました。注目すべき変更が行われましたが、あまり良い方向に進まないような気がします。以下は、3,500ページ以上に及ぶ文書の重要な5つのポイントです。

 2025年8月20日。暑い日とヨーロッパの混雑したビーチ。誰も休暇中でした。これは、欧州化学品庁(ECHA)が規制案の背景文書の更新を発表する絶好のタイミングでした。この背景文書は、非常に重要なEUのユニバーサルPFAS規制案に関連しています。

 この「PFAS規制案」を作成したEU加盟5か国は、意見募集に対して寄せられた5,600という記録的な数の意見を精査し、背景文書を更新しました。PFAS禁止に関する最終的な推奨事項は?すべてのPFASの用途と物質を含めることです。

 1週間後(人々が夏の休暇から戻ってくる前に素早く行動する必要がある)、ECHAがPFAS規制を分割することを発表し、禁止措置の評価から8つのPFAS用途(分野)を除外するという決定を下りました。これは、文書提出者が意図した包括的なアプローチとはまったく異なっています。

 とはいえ、背景文書の更新には意味がないでしょうか?全くそんなことはありません。この文書は今後の規制プロセス全体を導くものであり、最も重要な文書として深く掘り下げて研究する価値があります。これは正直、膨大な量です。

 3,544ページ程度の文書は全部読むのがどれだけ難しいかと思うかもしれませんが、ご安心ください。ChemSecが代わりにその作業を行いました。以下は、更新からの5つの重要なポイントです。ここからは、今回の更新において5つの重要ポイントについて紹介していきます。

1. PFAS規制が緊急に必要

 誰も驚かないことに、今すぐPFAS問題を解決する必要があります。これは今人類が直面する最も大きな環境問題の1つです。そして、時間的に余裕はありません。

 更新後の文書は、PFASの製造や使用を最小限に抑える「緊急の必要性」があることを明確に示しています。PFASは環境中で永続的であり、将来世代に対し「不可逆的な損害」をもたらす脅威となっています。

 これらの「永遠の化学物質」は水や土壌を汚染し、食品や血液中にも存在します。現在のところ、「PFASの供給源を断ちなければ」、これらのレベルは上昇し続ける見込みです。

2. 大きな輸出に関する例外措置

 今回更新された文書によると、用途を問わず、PFAS製造者は非EEA諸国向け輸出のために製造を無期限で続けることができます。これは(EUの視点から見ても)全く理に適っていません。グローバル化する世界には、EU市民が引き続きばく露されることになります。

 この抜け穴をEU域内のPFAS製造者に提供することは、非常に問題になっています。PFAS規制の目的は簡単です。つまり、PFASの使用と排出を廃止するために供給を止めることです。継続的な製造に対して例外措置を与えることは、その目的に真っ向から反するものです。

 特に驚いたのは輸出に関する例外規定です。これにより、PFAS関連業界は永遠の化学物質を製造し続けるためのフリーパスを取得し、自ら排出基準を設定することが可能です。これらの排出基準は無期限に確定され、更新されないことが予想されます(!)。これは技術進歩や利用可能な最良の技術の原則を無視し、技術やよりクリーンな解決策が進歩なしな状況であると仮定しています。

 このままでいくと、未来はどのような世界になるのか想像できます。ヨーロッパ全域で約23,000の汚染された地域が明記されており、その多くは水質を汚染し地域社会に被害を与えた生産拠点によって引き起こされました。今後、無制限で製造と排出を許可することはEU市民を保護するどころか、同じ過ちを繰り返します。

3. 排出管理は幻想に過ぎない

 製造過程時の排出管理に焦点を当てることは極めて残念です。実際の解決策を見つけない場合、業界は常に「排出管理」を魔法の解決策として実施します。しかし、歴史の中で同じようなことを何回もくり返してきた通り、それは効果がでません。

 米国のパーカーズバーグ(映画『ダーク・ウォーターズ』の背景となった話)、イタリアのミテノ=トリッシーノ、オランダのドルトレヒトを見てください。それぞれが「PFAS排出の管理」が幻想、そして非常に高価な幻想に過ぎないことを思い出させる事例です。   

 さらに皮肉なのはコストの議論です。企業は透明性や化学物質登録の費用について常に不満を抱えていますが、地下浸透箇所の措置などに数億ドルを費やすことには何の問題もありません。

4. PFAS規制における過剰な例外規定

 更新された文書では、PFAS用途に対してあまりにも多くの長期的例外規定が与えられています。汚染を迅速に削減する代わりに、このアプローチはすべてを遅らせ、人々と環境を数十年にわたってばく露させ続けます。

 現時点で86の例外規定が検討されています。そのうち、事実上継続的な汚染を許可し、制限時間が全くないものもあります。その他の例外規定は非常に広範囲に及び、意味がありません。例えば、「電線およびケーブル」という単一カテゴリの場合には、PFASの使用に13年半の猶予期間が与えられます。

 これらの例外規定により、規制を通じてPFASを廃止するどころか、数十万トンのPFASが環境中に排出され続けることになります。

5. イノベーションのインセンティブはどこにある?

 同規制案はイノベーションと競争力への関心を欠いています。このPFAS禁止はイノベーションを刺激すべきものであり、それを妨げるものではありません。

 過去5年間、PFASを代替するためのイノベーション創出が急増し、多くの実現可能な代替案がすでに市場に出て、他のことも順調に進んできました。これらの解決策は、ヨーロッパを国際的な競争の最前線に押し上げる可能性を示すものです。

 こういう背景に、政策立案者がこれらの環境技術の先駆者を妨害するのは驚くべきことであり、逆効果です。EUが繁栄を増進させれば、先駆者として道を切り開くべきであり、新たに障壁を設けるべきではありません。

努力を称賛すべき

 とは言え、加盟国がPFASの生産と使用に関する重要なデータを収集・分析した努力は大いに評価に値するべきです。この作業は、一般に知られていない情報を明らかにし、規制プロセスの透明性への強いコミットメントを示しています。

 ChemSecは、包括的なPFAS規制がこれらの有害物質を管理する唯一の効果的な方法であるという理念を共有しています。優先事項は、永続的な特性を有するPFASの供給を止めることです。

(注意:この記事に記された内容や意見は、著者の個人的見解です。)


 本記事の著作権は、2002年に設立された国際化学物質事務局(ChemSec)に帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とChemSecとの間で合意がなされています。ChemSecは、有害化学物質をより安全な代替品に置き換えることを提唱し、独立した非営利団体として活動しています。転載元:ChemSec

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