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共同声明:化学業界の影響によりカナダのPFAS分類リストが潰されている

 カナダ環境保護団体のENVIRONMENTAL DEFENCE(環境防御)、カナダ非営利組織のECOJUSTICE(環境正義)、CANADIAN ASSOCIATION OF PHYSICIANS FOR THE ENVIRONMENT(カナダ環境保護医協会)及びBREAST CANCER ACTION QUEBEC(乳がんアクション・ケベック)

 トロント|クレジットのミシサガ族、アニシュナベグ族、ハウデノサウニー族、ウェンダット族の伝統的な本拠地 – 2023年5月、カナダ政府はカナダ環境保護法(CEPA)に基づき、有害物質リストにPFASをグループとして追加することを提案しました。PFASを有害物質としてリストすることにより、政府はこれらの危険な「永遠の化学物質」を制限・禁止する規制措置を講じることが可能です。しかし今日は、プラスチックや繊維製品などに広く使用されているフッ素樹脂をPFASの分類から除外し、前回提案を撤回しました。これは、世界的な問題となっている汚染物質に対処する際のカナダのアプローチを弱めるだけでなく、規制スケジュールも数か月遅らせ、カナダに住む人々がどこでもあるような難分解性で有毒な汚染物質から保護するために必要な連邦政府の措置を待ち続けることになります。これはカナダが主張するように前向きに進歩することではなく、PFASへの対応を後退させます。

 ENVIRONMENTAL DEFENCE有害物質シニアプログラムマネージャーであるCassie Barker氏は、次のように述べました。

「PFASの有害性に関する証拠が次々に明らかになる中、カナダが緊急に必要とされるPFASの段階的な廃止を引き延ばしていることは残念です。この膨大な種類の難分解性を有する「永遠の化学物質」は、環境を破壊し、病気を誘発しています。世界中の他の司法管轄区域がPFASへの取り組みを進めている一方、カナダは危害から利益を得て事業を続けようとする化学業界の要求に屈しています。」

 Ecojusticeヘルシー・コミュニティ・プログラムディレクターのElaine MacDonald氏は、次のように述べました。

「化学業界は何十年もの間、PFASの有害性を隠しながら、その安全性が問題ないと虚偽の主張をしてきました。科学者たちがどのような種類のPFASが市場に存在し、製品に隠され、飲料水を汚染しているのかを特定しようとする中、業界はPFASの使用の安全性及び正当性について誤解を招く可能性のある主張をすることにより、PFASを規制しようとする試みを妨害し、遅らせ続けます。」

 Canadian Association of Physicians for the Environment(CAPE)麻酔医のLyndia Dernis博士は、次のように述べました。

「PFASに対する対策が遅れつつある中、人々はこのいつでもどこでも存在する「永遠の化学物質」による健康被害のリスクに直面しています。この遅延は、経済的・精神的・医療的悪影響を及ぼし、将来の病気や死亡の負担を増大させます。CAPEは、最も有害な物質を優先順位付けするためにカナダ環境保護法(CEPA)を改正することを支持し、業界からの圧力に応えてPFASへの規制を弱めることが公衆衛生と環境正義にとって後退となると考えています。」

 Breast Cancer Action Quebecプログラム及びアドボカシー・コーディネーターのJennifer Beeman氏は、次のように述べました。

「PFASを一つのクラスとして規制することは、公衆衛生を守るために不可欠です。世界をリードするPFASの科学者たちが規制当局に対してこの膨大な種類の永遠の化学物質群を一つのクラスとして扱うように働きかけているにもかかわらず、カナダ連邦政府はPFASのリスクアセスメントを再発行し、フッ素樹脂を規制の対象外としました。この規制プロセスの策定は3年前から進められてきましたが、より多くの意見募集と業界のロビイストによる遅延戦術を通じて、今後も続く見通しです。カナダ連邦政府は、業界の虚偽主張に対して抵抗し、PFASクラスの定義をそのまま維持し、業界の干渉から規制プロセスを守らなければなりません。業界は、フッ素樹脂の全ライフサイクルに関する安全性データを提供することができません。そのため、予防措置は、私たちが代償を払う一方で汚染を続けようとする強力ロビー団体のかわりに、保護規制の原動力となる必要があります。」

背景:

  • 約15,000種類の化学物質の総称であるPFASは、フッ素原子と炭素原子が強力な結合をしており、分解されにくい性質を持っています。

  • 業界は何十年もの間、このPFASクラスの有害性を知りながら、そのデータを規制当局や一般市民から隠してきました。業界はPFASビジネスで何十億ドルもの収益を上げる一方、関連の健康被害と浄化による費用は世界全体で数兆ドルに達しています。カナダがPFASにかかる費用は、90億ドルに上ると推定されています。

  • カナダでは98%の人の血液からPFASが検出されました。

  • PFASは、6000万人に飲料水を供給している五大湖流域の大気・雨・種・大気・水中に存在します。

  • PFASは、健康に悪影響を及ぼし、心血管系疾患死亡・がん精巣がん、肝障害、低出生体重児出生、甲状腺疾患、免疫系への影響、喘息などのリスクに関連しています。現時点で医師たちは、PFASにばく露された患者を特定・治療する方法について訓練を受けています。

  • 若者北部のファースト・ネーションの住民は、よりも大きな被害とばく露を受けています。また、消防士はPFAS関連のがんで死亡する確率が高いです。

  • フッ素樹脂は、PFASの中で最も多く生産・使用されているものの一つです。プラスチック製品に使用され、リサイクルプラスチックにも含まれ、環境汚染と温室効果ガス排出の重要かつ十分に文書化された原因となっています。繊維製品・調理器具・電子機器に組み込まれる他、フッ素樹脂は食品容器を含むプラスチック製品や包装材にも使用され、フッ素化処理を施したプラスチックが所望の機能を果たすものです。

  • 業界が主張する広範囲なフッ素樹脂の安全性は、特にPFOAのような既知の有害PFASを生成・放出する可能性がある製造・加工・使用の場合には実証されていません。

  • この分析では、「フッ素樹脂が環境や人体の健康に対する懸念が低いと結論づける科学的根拠は見つからない」とされています。

  • 最近の子供用手袋のテスト結果を踏まえて、カナダではフッ素樹脂コーティングされた製品やPFOAを生成する製品が販売されています。

  • PFASは、これまで考えられていたよりも高いレベルで皮膚を通じて吸収されます。

  • 最新の世論調査によると、カナダにおいて5人中4人がPFASの規制措置を期待しています。

  • 食品に接触する製品にはPFASが含まれていることが判明しました。

  • 多くのブランドでは、すでにPFAS不使用の製品となっています。

  • カナダBC(ブリティッシュコロンビア州)は6月、PFASの製造業者12社に対して巨額の浄化費用と飲料水処理費用を支払う集団訴訟を開始しました。BCは、米国の連邦政府及び州政府とともに、汚染原因者への責任追及を行っています。

  • その他の司法管轄区域(米国、欧州連合)は、製品の禁止措置及び飲料水基準の導入を推進するとともに、偏った業界科学を否定し、この問題に関する科学的コンセンサス力を高めています。

  • フッ素樹脂を含むPFASに対処する包括的な取組は、国際プラスチック条約(Global Plastics Treaty)に基づく懸念化学物質対策の推進に不可欠です。これは、カナダがリーダーシップを発揮し、国内での実施の準備を整えることを求めます。

  • PFASの分類は、最近のG7 気候・エネルギー・環境大臣会合コミュニケでも優先事項として強調されています。また、カナダは、2025年にG7を開催する予定です。

(注意:この記事に記された内容や意見は、著者の個人的見解です。)


 本記事の著作権は、ENVIRONMENTAL DEFENCEに帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とENVIRONMENTAL DEFENCEとの間で合意がなされています。

 ENVIRONMENTAL DEFENCE (environmentaldefence.ca)は、カナダを代表する環境保護団体であり、政府・業界・個人と協力し、きれいな水・安全な気候・健全な地域社会を守るために活動しています。転載元:ENVIRONMENTAL DEFENCE

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