2023年1月17日、欧州化学品庁(ECHA)は危険な性質を持っている9つの物質を認可対象SVHC候補リストに新たに追加することを公表しました。これらの物質は、難燃剤、塗料・コーティング、インク・トナー、コーティング製品、可塑剤、パルプ・紙の製造などに用いられています。
現時点で、SVHC物質は前回の224エントリーから233エントリーに上っています。そして、今回追加された物質の詳細は、下表をご参照ください。
順番 | 物質名 | EC番号 | CAS番号 | 追加理由 | 主な用途 |
1 | 1,1'-[ethane-1,2-diylbisoxy]bis[2,4,6-tribromobenzene] 1,1'-[エタン-1,2-ジイルビスイソオキシ]ビス[2,4,6-トリブロモベンゼン] | 253-692-3 | 37853-59-1 | 高持続性・高生体内蓄積性物質(vPvB) | 物質自体はREACH規則で登録されていないものの、SVHC と指定されることは、将来的に取り返しのつかない代替を避けるための措置と見なすことが可能。 |
2 | 2,2',6,6'-tetrabromo-4,4'-isopropylidenediphenol 2,2',6,6'-テトラブロモ-4,4'-イソプロピリデンジフェノール | 201-236-9 | 79-94-7 | 発がん性 | エポキシコーティング回路基板、プリント回路基板、紙や繊維などの製品に含まれる反応性難燃剤、ポリマー樹脂製造用の添加剤難燃剤。 |
3 | 4,4'-sulphonyldiphenol 4,4'-スルホニルジフェノール | 201-250-5 | 80-09-1 | 生殖毒性、環境への内分泌かく乱性、人の健康への内分泌かく乱性 | パルプ、紙及び紙製品、繊維、革または毛皮と化学品の製造に用いること。 |
4 | Barium diboron tetraoxide メタホウ酸バリウム | 237-222-4 | 13701-59-2 | 生殖毒性 | 塗料およびコーティング。 |
5 | Bis(2-ethylhexyl) tetrabromophthalate covering any of the individual isomers and/or combinations thereof ビス(2-エチルヘキシル)=テトラブロモフタラートの個々の異性体および/またはそれらの組み合わせのいずれかを含む | - | - | 高持続性・高生体内蓄積性物質(vPvB) | 軟質ポリ塩化ビニル、ワイヤ・ケーブルの絶縁体、フィルム・シート、カーペットの裏地、コーティング生地、壁用被覆材、接着剤に用いる難燃剤および可塑剤。 |
6 | Isobutyl 4-hydroxybenzoate 4-ヒドロキシ安息香酸イソブチル | 224-208-8 | 4247-02-3 | 人の健康への内分泌かく乱性 | 物質の製造、並びにコーティング製品、充填剤、パテ、ペースト、モデリング粘土、インクとトナーに含まれること。 |
7 | Melamine メラミン | 203-615-4 | 108-78-1 | 人間の健康に深刻な影響を与える懸念と同等レベル、環境に深刻な影響を与える懸念と同等レベル | ポリマーと樹脂、コーティング製品、接着剤とシール剤、皮革処理製品、実験用化学品に含まれること。 |
8 | Perfluoroheptanoic acid and its salts ペルフルオロオクタン酸(PFHpA)及びその塩 | - | - | 生殖毒性、難分解性・生物蓄積性・毒性 (PBT)、高持続性・高生体内蓄積性物質(vPvB)、人間の健康に深刻な影響を与える懸念と同等レベル、環境に深刻な影響を与える懸念と同等レベル | 物質自体はREACH規則で登録されていないものの、SVHC と指定されることは、将来的に取り返しのつかない代替を避けるための措置と見なすことが可能。 |
9 | reaction mass of 2,2,3,3,5,5,6,6-octafluoro-4-(1,1,1,2,3,3,3-heptafluoropropan-2-yl)morpholine and 2,2,3,3,5,5,6,6-octafluoro-4-(heptafluoropropyl)morpholine 2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン-2-イル)モルホリンと 2,2,3,3,5,5,6,6-オクタフルオロ-4-(ヘプタフルオロプロピル)モルホリンの反応質量 | 473-390-7 | - | 高持続性・高生体内蓄積性物質(vPvB) | 専門的な労働者により、製剤または再包装の形で、産業現場および製造において成形品に用いること(広範囲で使用)。 |
今後、上記の物質そのもの、混合物または成形品に含まれる物質のいずれかを取扱う企業は、下記の主な法的義務が課せられます。
情報伝達義務
0.1%w/w以上のSVHCを含有する成形品の供給者は、顧客および消費者に成形品の安全な使用を可能にするための情報を川下ユーザーに提供する他、消費者から要求があった場合、同じ情報を45日以内に提供すること;
0.1%w/w以上のSVHCを含有する物質または調剤の供給者は、EU REACH規則に従って安全データシート(SDS)を川下ユーザーに提供すること。
SVHC届出義務
成形品中のSVHC総量が1輸入者あたり年間1トン以上となれば、EU域内の製造者、輸入者または唯一代表者(OR)は、候補リストに収載された日(2023年1月17日)から6ヵ月以内にECHAへSVHC届出を行うこと。
SCIP データベースの登録義務
「廃棄物枠組み指令を改正する指令(EU)2018/851」に基づき、2021年1月5日以降、0.1%w/w以上のSVHCを含有する成形品の製造者は、ECHAへSVHC届出を行うこと(届出情報がECHAのSCIPデータベースを介して公開)。