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EPA委員会が「プラスチックが子供の健康を脅かす」と警告、バイエル社「十分な証拠がなかった」と反論

本記事の著作権は、The New Ledeに帰属します。

 業界では、プラスチックが子供に悪影響を及ぼすという証拠がほとんどないとの声が上がる一方で、プラスチックやその他の有害化学物質から子供たちを保護するために、諮問委員会はより強力な環境規制を求めています。

 米国環境保護庁(EPA)は1年前、この「こどもの健康保護諮問委員会(CHPAC)」(以下、「委員会」という)に科学的知見の検討を依頼し、プラスチックや関連化学物質が子供にどのような影響を与えるか、またEPAがどのような対策を講じるべきかといういくつかの問題について意見を求めました。

 同委員会の回答は先週、EPAのウェブサイトで公開された。科学者23人、地方政府の職員、保健分野の専門家および擁護者が署名した委員会からの書簡は、プラスチックのライフサイクル全体を通じて「ヒト健康への重大な懸念」があり、特に子供が脆弱な立場にあることを指摘し、EPAが講じるべきいくつかの措置を提示しました。

 委員会の書簡には次のように述べています。「プラスチック汚染が子供の健康を害し、発達障害、先天性欠損症、がんやその他の深刻な疾患のリスクを高めることは科学的に証明されています。特に累積的なばく露を受けるコミュニティにおいては、その傾向が強いです。これらの被害は、プラスチックのライフサイクル全体を通じて発生することが可能である。」

 委員会のメンバーは、プラスチックの原料である化石燃料の採取から製造、使用、廃棄あるいはリサイクルに至るまで、プラスチックが健康に悪影響をもたらす可能性があると警告しました。化石燃料を地中から採掘することは、粒子状物質や揮発性有機化合物(VOCs)などの大気汚染物質を放出します。また、プラスチックを製造するためには、ビスフェノールA(BPA)、各種の有機フッ素化合物(PFAS)、フタル酸エステルや難燃剤など、様々な有害化学物質を使用する必要があります。その使用や焼却、リサイクルによって流出する可能性があります。

 これらの汚染物質(およびプラスチックに関連する約16,000種の化学物質のうち数種類)は、発達障害、生殖系や免疫系の問題、呼吸器疾患や特定のがん等、様々な健康被害と関連しています。委員会のメンバーは、有色人種の子供や低所得地域に住む子供が最もリスクにさらされていると結論付けました。

 カリフォルニア大学サンフランシスコ校の関連研究者、そして書簡の署名者の一人であるVeena Singla氏は次のように述べています。「プラスチック汚染とは、単なるプラスチックごみだけではなく、化石燃料から、プラスチック製品、プラスチック廃棄物に至るまで、プラスチックに関連するすべての汚染と有害化学物質を指します。また、子供の方は大人に比べて体重あたりの呼吸量、食物摂取量、水分摂取量が多いため、多くの化学物質へのばく露量が高くなる。」

 「プラスチック汚染とは、単なるプラスチックごみだけではなく、化石燃料から、プラスチック製品、プラスチック廃棄物に至るまで、プラスチックに関連するすべての汚染と有害化学物質を指します。」—Veena Singla氏(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)

 委員会は、子供の曝露を削減するためにEPAに対し複数提案しました。最優先事項は「プラスチックを減らすこと」です。

 ベネディクト大学の教授・研究者、そして書簡の署名者でもあるJean-Marie Kauth氏は、「プラスチックの必要不可欠でない使用は廃止すべきである」と述べました。

 その他の最優先事項として、プラスチック製造量の削減を目指す国際プラスチック条約を支持し、未使用のプラスチックと再生プラスチックの両方に含まれる化学物質や添加剤について、使用を許可する前に健康に与える有害な影響がないかどうかを検査することが挙げられています。

 いくつかの提案では、「大気浄化法(Clean Air Act)」、「有害物質規制法(Toxic Substances Control Act)」や「化学事故防止による安全な地域社会(Safer Communities by Chemical Accident Prevention rule)」など、プラスチック汚染防止に向けた汚染に対する既存規制を強化し、或いはより厳格化するようEPAに求めました。

少数派の反対意見

 異例の動きとして、同委員会は、最初の書簡における大多数の委員会メンバーの主張の多くを否定する2通目の書簡をEPAに提出しました。この2通目の書簡に署名したのは、バイエル クロップサイエンス(Bayer Crop Science)のシニアフェロー兼メディカル・アフェアーズ部門の担当者であるS. Eliza Lockwood博士だけです。バイエル社は現在、同社の除草剤「ラウンドアップ」ががんを引き起こすと主張する数千件の訴訟に巻き込まれています。

 Lockwood氏は、検討された科学論文から導き出した「コンセンサス(合意)」は、「子供の頃のプラスチックへのばく露と健康への悪影響(がん、発達毒性、生殖毒性やその他の問題を含む)との間に明確な関連は認められていないということである」と述べました。

 Lockwood氏は、電子廃棄物(e-waste)の取扱が子供にとって最も懸念されるプラスチックばく露源であり、これを優先すべきだという意見に同意しました。

 「こうした状況の他、プラスチック製品が人間や動物に有害であるという証拠はほとんど見つからない」とLockwood氏は指摘し、海洋プラスチックごみ対策を優先させることも促しました。

 「こうした状況の他、プラスチック製品が人間や動物に有害であるという証拠はほとんど見つからない」―S. Eliza Lockwood博士、Bayer Crop Science

 「健康人を対象とした無作為化比較試験を行うことは非常に困難である」ことを認めつつ、マイクロプラスチックの人体への悪影響に関する研究不足に言及し、子供のBPAへのばく露は極めて微量であり、フタル酸エステルは広範な試験を経て米国で認可されていることを述べました。

 Lockwood博士は「子供がこれらの化学物質にばく露されているという明確な証拠がなく、またこれらの化学物質群による健康影響を明示しないまま、これらの化合物を「懸念物質」と呼ぶのは、人騒がせである」と指摘しました。

 バイエル社は、Lockwood氏の書簡に関するコメントの要請に応じなりませんでした。

 Singla氏は、この2通の書簡は科学文献の解釈に対する異なるアプローチを主張すると述べました。

 「多数派の書簡は、全米科学アカデミーが推奨するアプローチを採用し、科学的証拠全体を客観的かつ首尾一貫した形で透明性を確保して検討するシステマティック・レビュー(系統的レビュー)に依拠している」と彼女は指摘しました。

政治的環境

 バイデン前政権下で求められた同委員会の助言は、大きく異なる政治環境の中で提示されることです。トランプ政権下のEPAは、事業とイノベーション活動を促進するという名目で、書簡で言及されたものを含む数十の規制に焦点をあてています。最近、米国はまた、国連が主導する「国際プラスチック条約」の交渉において、プラスチックの生産に直接的な規制を課すいかなる提案にも反対する姿勢を示しました。

 しかしKauth氏は、最初の「アメリカを再び健康にする委員会」の報告書で取り上げたプラスチックが子供に悪影響を及ぼすという問題が、連邦機関の監視対象リストに収載されていると述べました。同委員会による2回目の報告書では、業界の影響力によって同問題の内容が骨抜きにされたようであると彼女は指摘しました。

 「FDA(米国食品医薬品局)とEPA(米国環境保護庁)は、子供を守るという約束を果たしていない」と彼女は述べました。

 EPAの広報担当者は電子メールで送信された声明で、同庁が「子どもの健康保護諮問委員会と積極的に交流し、その勧告を検討している」と述べました。

 Singla氏は、これらの提案がEPAや他の規制機関に取り上げられれば、子供の健康水準を大幅に向上させる可能性があると指摘しました。

 「EPAやその他の機関が科学に従うことを望んでいる」と彼女は述べました。「これらの勧告は、地域、州、国際レベルの他の政府やコミュニティにも関連するものです。どこで起きているかに関わらず、プラスチック汚染を減らすための共同行動は、子供の健康を守る一助となることが予想される。」

(注意:この記事に記された内容や意見は、筆者の個人的見解です。)

筆者について

Brian Bienkowski

 Brian Bienkowski氏は、人間と環境の健康問題の報道に特化した受賞歴のあるニュースルームである『The New Lede』の編集主幹です。また、環境と人間の健康の話題を取材して15年以上の経験を持つベテラン記者です。『The New Lede』に加入する前に、10年近く『Environmental Health News』のシニア編集者を務め、そのニュースルームと2つの地方支局を担当してきました。また、2020年から2024年までポッドキャスト『Agents of Change in EJ』の創設者、プロデューサー、そしてホストも務めました。

 Bienkowski氏は編集と報道の担い手として、ヘルスケアジャーナリスト協会、コロンビア大学ジャーナリズム大学院、ハンター校や環境ジャーナリスト協会などから複数の賞を受賞しました。ミシガン州立大学で環境ジャーナリズム修士号を取得し、ミシガン州北部に在住しています。

 本記事の著作権は、The New Ledeに帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とThe New Ledeとの間で合意がなされています。The New Ledeは、人間と環境の健康問題の報道に特化した受賞歴のあるニュースルームです。転載元:The New Lede

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