2023年3月22日、欧州連合（EU）のPFAS規制案に対する意見募集が開始されました。これらの有害な化学物質の包括的な禁止に対し、100を超える合計1,300億ユーロ以上の価値を持つ消費者ブランドは、環境NGOの国際化学物質事務局（ChemSec）による政策提言活動を通じて、強い支持を表明しました。

　同規制案に係る意見募集に対し、多くの企業は有害な化学物質のPFASに反対意見を伝えました。

　製品や工程からPFASを段階的に排除することを目的に、環境NGOのChemSecはEUにおけるPFASの包括的な規制を求める政策提言活動、いわゆる「有害なPFASの廃止運動（PFAS Movement）」を開始しました。今まで、参加社数は108社に上っています。

　そのうち、H&Mグループ、Urbanears（アーバンイヤーズ）やThe Cookware Company等を含むファッション・家庭用品・食品・パーソナルケア用品といった様々な分野を代表する有名なブランドが挙げられています。これらのブランドの総価値は1,300億ユーロを突破しました。

　ChemSecの運営担当ディレクターAnne-Sofie Bäckar氏の話によると、欧州でのPFAS禁止はすべての製造業に大きな影響を与え、世界のサプライチェーン全体の企業に対して後続の多くの作業を求める見込みです。ただし、一部の企業は、大きすぎる改正を行うと法的に正当化できないとして、この規制案に関して反対する意見を発表しました。そのため、「有害なPFASの廃止運動」における影響力のある消費者ブランドからの同規制案への支持は非常に重要であり、製品や工程におけるPFASの排除を望んでいるという意思を強く示すことです。

　キッチン用品は、PFASの用途の中で最も知られている製品カテゴリーです。特に、代替品があるにもかかわらず、PFAS含有ノンスティックフライパンは多く見られます。

　「The Cookware Companyは、2007年以降に製品からPFASを排除することに努めています。事業により得られた成果を享受しながら、有害事象を次世代に受け継ぐことは間違っているように思います。したがって、当社は毒性・難分解性・生物蓄積性の性質を持ち、人の健康と環境に深刻なリスクをもたらすことが知られているPFASの禁止を全面的に支持しています。PFASにおける指導的立場を担うことにより、持続可能性と健康へのコミットメントを顧客、利害関係者及びより広いコミュニティと共有しています」とThe Cookware Companyの最高経営責任者Wim De Veirman氏は述べました。

ハリウッドからの助け

　ChemSecによる「有害なPFASの廃止運動」は、ブランドだけでなく、ハリウッド映画『ダーク・ウォーターズ』への出演をきっかけにPFAS問題の活動家となったMark Ruffalo氏にも支持されています。

　この映画は、米国においてPFAS汚染が吹き出した後で起こった現実の出来事を描いたものです。その結果、米国の複数のPFAS製造メーカーは、数百万ドルのかかる訴訟に巻き込まれました。

　人の健康と環境に対するPFASの脅威及びすべての訴訟は、影響力を持っている他団体、即ち「機関投資家」の間でも注目を集めています。去年、資産総額8兆米ドルにのぼる47の機関投資家は、ChemSecが指定した54社の化学企業に対し、「永遠の化学物質」と呼ばれる難分解性の高いPFASの製造を停止するよう求めました。

EUのPFAS禁止

　この世界初の広範囲に及ぶPFAS規制案は、およそ3年を経てデンマーク、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデンによって作成され、約2,000ぺージに及ぶ将来的な影響がまとめられています。

　同規制案は、2020年のPFAS排出量が75,000トンに達したことを示しています。このまま何の対策も講じなければ、30年後の排出量が440万トンに上ることが予測されます。このPFAS排出量は、家具・化粧品・電子機器などPFASを含む多くの製品の製造及び使用に大きく由来しています。

　本記事の著作権は、2002年に設立された国際化学物質事務局（ChemSec）に帰属します。なお、記事を日本語に翻訳して掲載することについて、当社とChemSecとの間で合意がなされています。ChemSecは、有害化学物質をより安全な代替品に置き換えることを提唱し、独立した非営利団体として活動しています。転載元：ChemSec