1.はじめに
揮発性有機化合物(VOC)は、常温常圧で大気中に容易に揮発する有機化学物質の総称のことです。WHOでは、室温で沸点が50℃から260℃までの有機化学物質はVOCとして定義されます。中国の国家標準により、VOCとは
101.3kPaの標準圧力で250°C以下の初期沸点を持つ有機化合物、および/または
大気中の光化学反応に関与する、または関連規制で指定された有機化合物。
VOCはコーティング、インク、接着剤などさまざまな製品に広く存在します。現代の産業でこれらの製品が広く使用されているため、製造・使用など各プロセスでのVOC排出によって引き起こされる汚染問題はますます深刻になっています。
多くのVOC自体は急性毒性がありませんが、人間の健康に長期的な悪影響を及ぼし、他の大気汚染物質の重要な前駆物質として、都市のもや、光化学スモッグなどの汚染気象を引き起こす可能性があります。VOCの健康と環境に対する長期的な影響を考慮し、中国政府は近年、VOC排出管理をさらに強化し、その管理を多くの国家政策に組み込んでいます。
2.背景
これまでのところ、中国のVOCに関する専門の法規制はありません。ただし、VOCを規制するためのさまざまな政府の取り組みが政策文書に見られます。例えば、
2013年、中国は5年間の大気汚染防止および管理行動計画を開始し、PM2.5およびPM10の管理に焦点を当てた中国の現代の大気環境ガバナンスの始まりを示しました。
その後、2018年に青空防衛に関する3カ年行動計画が開始されました。規制対象は、SO2大気汚染物質、窒素酸化物、粒子状物質、および揮発性有機化合物(VOC)に及びます。3か年計画では、主要分野でVOC含有量が高い溶剤型コーティング、インク、接着剤の製造と使用を禁止しています。
2018年に中国の大気汚染防止および管理法が改定され、VOCを含む製品の品質基準の策定、低VOC溶剤の製造と使用の奨励、および工業用塗装企業による低VOCコーティングの使用要件が定められました。
2019年、VOC制限に関する一連の基準案の発行に伴い、中国生態環境部(MEE)は6月26日に「重点業界発揮性有機物総合治理方案」を発表し、VOCへの管理強化に乗り出しました。この計画では、VOC排出量を10%削減する及び主要産業での低VOCコーティングの促進という目標を打ち出しました。主要産業と主要分野の詳細情報もこの計画に記されています。
2020年6月24日、MEEはVOC管理のための2020年行動計画を発表しました。これは、10の主要な対策と、重点地域および産業群を指定しています。行動計画には、より良いVOC排出管理を促進するためのインセンティブポリシーも含まれています。国の要件を満たす低VOC原材料と補助材料を十分に使用している企業は、ポジティブリストと政府のグリーン調達リストに含まれることになります。
3.要件
中国は2018年に青空防衛に関する3カ年行動計画を開始し、揮発性有機化合物(VOC)の排出を管理するための基準の策定が2019年の優先目標として推進されました。2019年と2020年には、約10のVOC管理に関する国家標準が意見募集または正式公布されました。ここでは、2019年と2020年に公布されたGBを簡単に紹介し、低VOC製品とグリーン製品とは何かを説明します。
国家標準番号 | 標準名 | 実施日 |
GB 30981-2020 | 工業保護用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年12月1日 |
GB/T38597-2020 | 低揮発性有機化合物含有塗料製品の技術要件 | 2021年12月1日 |
GB 18581- 2020 | 木製品用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年12月1日 |
GB 18582- 2020 | 建築壁用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年12月1日 |
GB 24409- 2020 | 車両用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年12月1日 |
GB 38468-2019 | インテリアフロア用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年7月1日 |
GB 38469-2019 | 船舶用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年7月1日 |
GB 30981-2020 | 工業保護用塗料中の有害物質の制限量 | 2020年12月1日 |
GB 24613-2009 | 玩具用塗料中の有害物質の制限量 | 2010年10月1日 |
GB 24410-2009 | 内装材料 水性木製品塗料中の有害物質の制限量 | 2010年6月1日 |
コーティング製品には多くの種類があり、産業で広く使用されており、これらの製品のVOC含有量の管理することにより、産業プロセス中のVOC排出管理および大気汚染物質管理に大きなメリットをもたらします。このため、2019年と2020年には、コーティングにおけるVOC管理のための合計6つの強制性国家標準(GB)と1つの推薦性国家標準(GB/T)が策定されました。
それぞれ違う種類のコーティング製品に適用する6つのGBは、内容構造が類似しています。主に、用語と定義、製品分類、要件、試験方法、検査規則、包装マーク、および対応する製品における人と環境に有害な物質の許容度に関する基準の実施などで構成されています。これらの基準は、必須の技術要件として各種類の製品におけるVOC含有制限量も提示しています。つまり、関連するすべての製品は、中国で流通する前にこれらの要件を満たす必要があります。
強制性国家標準の傍らに、「GB/T38597-2020 低揮発性有機化合物含有塗料製品の技術要件」と「GB/T35602-2017 グリーン製品評価 塗料」は更に厳格な制限基準を提供しています。
上の表が示したように、機会設備コーティング用の水性塗料の場合、プライマー(primer)を例にとると、GB 30981のVOC制限量は300g / Lに対して、GB/T38597の制限量は250g / Lとなっています。GB/T35602になると、さらに200g / Lまで厳しくなりました。つまり、中国で流通する機会設備コーティング用の水性塗料に含まれるVOCは300g / Lという必須条件に満足する必要があります。その上、250 g / Lの制限を満たす場合は、低VOC製品として識別され、200g / Lの場合、グリーン製品として識別されます。企業がより高品質の製品を製造または使用することにより、当局から一定の優遇措置を受ける可能性があります。