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台湾「毒性及懸念化学物質管理法」

 2019年1月16日、台湾「毒性化学物質管理法(TCSCA)」は「毒性及び懸念化学物質管理法(TCCSCA)」に改正され、正式に公布されました。それと伴い、30以上の下位法規制は今後続々と改正される見込みです。今回の法改正は、対象化学物質の範囲を拡大するだけではなく、事故予防・ネット販売・罰則など多岐にわたり見直されました。第7条・第54条・第65条・第67条及び第72条は公布日から発効し、それ以外の条文は一年後から実施に移ることになります。

台湾「毒性及び懸念化学物質管理法
総統令第10800005221号
毒性及び懸念化学物質管理法 (毒管法、TCCSCA)
審議機関立法院
主管部門
台湾行政院環境保護署(EPA)
改正の経由
公布日2019年1月16日
施行日2020年1月17日
状態:施行中

台湾行政院環境保護署(EPA)

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 管理体系

図1 –改正「毒性化学物質管理法」(毒管法、TCSCA)に基づく管理のフレームワーク

 誰か影響を受けるのか?

 新規化学物質及び既有化学物質の製造者または輸入者は改訂版「毒管法」にもとづき登録を行わなければなりません。
 EU REACHの「唯一の代理人(OR)」は台湾では適用されません。
 台湾では、台湾内の輸入者および製造者に対してのみ、台湾内に在する第三者機関(Third Party Representative)の任命が認められています。

 主管機関

 台湾当局は2014年に環境資源部を設立し、現有行政院環境保護署を代替すると予定しています。組織再編後、行政院の下で化学物質及び環境汚染を所管する部署が設置されます。更に、当該部署が5つの課に分けられ、その中の1つが「毒管法」に基づく登録や化学物質評価に関わる業務を所管することになります。約50名のスタッフが配属される予定です。一方、登録用書類の審査を支援するため、台湾当局は外部から専門家を雇用し、専門家チームを作る見通しとなっています。

 「毒管法」の制定過程

 1986年11月26日に制定かつ実施された「毒性化学物質管理法」は今まで7回の改正を経て、2019年7月時点で合計340種(194の管理番号)の管理対象毒性化学物質を指定しております。その内、使用禁止59種・使用用途制限162種・取扱許可制(第四類)119種となっています。

 改正「毒管法」の制定過程は以下の通りになります:

  • 2012年1月1日、改正版「毒管法」は台湾行政院を通過し、立法院に提出に承認手続きに入りました。

  • 2013年3月21日、第四類毒性化学物質について事前申出制度とする旨で合意に達しました。

  • 2013年5月29日、「毒管法」についての第一回審議が立法院社会福祉及び衛生環境委員会を通過し、6条目は更なる検討が必要となりました

  • 2013年6月25日、残った6条目が立法院党団会議を通過しました。

  • 2013年11月22日、「毒管法」に関する3回目の審議が立法院を通過し、計17条目が新たに追加されました。

  • 2013年12月11日、改正版「毒管法」は大統領令第10200225131号を通じて正式発表されました。2013年6月に通過された改正案と比較し、改正された箇所はありません。

  • 2017年11月9日、「毒性化学物質管理法(TCSCA)」の一部改正案は台湾行政院を通過;

  • 2018年12月21日、台湾立法院で可決;

  • 2019年1月16日、「毒性及び懸念化学物質管理法(TCCSCA)」は総統令第10800005221号により正式に公布。

 補足書類

日本語版が入手可能!
台湾「毒性化学物質管理法」

 台湾に在する化学企業が最も注目していることは、新化学物質及び既有化学物質登録です。登録の枠組みについては図1までご参照ください。実際に登録する時に必要となる試験データ、トン数等級、ばく露及びリスク評価等に関わる規定や規則などは2014年中に公表される予定です。具体的に下記規定・規則が含まれます:

  • ž化学物質登録管理弁法(新規)

  • 毒性化学物質管理法実施細則(改定)

  • 第4種毒性化学物質承認管理弁法(新規)

  • 化学物質登録委託審査弁法(新規)

  • 毒性化学物質表示及び物質安全データシート管理弁法(改定)

  • 毒性化学物質取扱い申請の費用基準(改定)

  • 毒性化学物質災害応変車両管理弁法(交通局と合同制定)

既有化学物質提報作業(Existing Chemical Substance Nomination:ECN)

 2010年12月31日終了した既有化学物質提報作業(Existing Chemical Substance Nomination:ECN)に基づき、台湾労工委員会(CLA)が台湾既有化学物質インベントリー(草案)を作成しました。その後、インベントリーを更新するため、CLAは2012年4月18日、「既有化学物質増補提報作業要点」(以下「SECN要点」)を発表し、関連事業者に対して、2012年6月から8月までに既有化學物質增補提報作業(Supplementary Existing Chemical Substance Nomination、以下「SECN」という)を急ぐよう呼びかけていました。2回の更新を経て、インベントリーに収載される物質は約79,000まで達しています。

 ECSIの追加更新として、さらにSECN(第二次SECN, SSECN)が2014年1月1日に開始され、MoL(労働部、CLAの後続)により主導される最後の増補として、候補者にECSIへの収載を促しました。提報の基準は下記の通り最終SECNと同じように定められます。
 
 “1993年1月1日から2011年12月31日の期間に輸入、製造、経営、使用または販売された化学物質で、国家既有化学物質インベントリー(NECSI、草稿)に既有化学物質として収載されていないものは、本施行令にもとづき提報することができる。”
 
 ---Direction of SECN (04/18/2012) 
 
SSECN提報申告済みのものについて、MOLは1993年1月1日から2011年12月31日までに台湾で製造または輸入された約93,000物質を含めて更新しました。インベントリーのオンライン検索はこちらで確認することができます。
 
MoLによって施行されるECN、SENCおよびSSECNに加えて、EPAではまた別の補足として2014年12月11日前に台湾市場で製造または輸入された化学品について既有物質としてインベントリーに収載させることになりました。事業者は毒管法下の新規及び既存化学物質登録管理弁法の第16条規定に基づき、2015年3月31日前までに過去にこれらの物質が製造または輸入される証明を提出しなければなりません。このインベントリーは2015年9月11日前に審査結果に基づき更新される予定です。

 

 登録の種類

 新化学物質登録

 台湾既有化学物質インベントリーを整備することが、「毒管法」に基づく新化学物質登録の前提条件となっています。インベントリーに収載されていない化学物質が新化学物質とみなされ、改正「毒管法」に基づく新化学物質登録を行わなければなりません。しかし、下記のいずれかに該当するものは、登録義務から免除されることとなります:

  • (1) 2%ルールに適用されるポリマー

  • (2) 年間取扱量が1トン未満の低懸念ポリマー

  • (3) 科学研究を目的とする年間取扱量が1トン未満の化学物質

  • (4) 商業目的としない副産物または不純物

  • (5) 単離されない中間体

  • (6) 混合物 (ただし、混合物に新化学物質が含まれる場合は適用されません)

  • (7) 成形品(Articles (通常使用で意図的に放出される化学物質が含まれる場合を除く

  • (8) 廃棄物

  • (9) 天然物質

  • (10) 試運転に用いる来秋及び設備に付随する化学物質

  • (11) 税関監視化学物質

  • (12) 国防を目的とする化学物質

 新化学物質については、輸入または製造開始90日前に登録を行わなければなりません。トン数等級及び用途に基づき、新化学物質登録は3種類の登録、すなわち、標準登録、簡易登録及び少量登録に分けられます。

 

図2-「毒管法」に基づく新化学物質登録の種類

図-3 新化学物質登録証(見本)

 
 
 登録承認の流れは条件によって異なり、毒性化学物質に該当するか確認する必要があるため、登録証には取扱い制限条件が記載されます(図3登録証サンプルをご参照ください)。これらの毒性をもつ化学物質は、仮に既有物質下で4つの区分をもつ毒性化学の一つとされた場合、さらに規制を受けることになります。台湾ではナノマテリアルもこの化学品登録システムで規定していますが、詳細は下位施行規定で定められることになる点に注意が必要です。 

図4-改正「毒管法」に基づく新化学物質登録の手続

図5-改正「毒管法」に基づく新化学物質登録に関わる試験データの詳細

 

 既有化学物質登録

 「毒管法」によりますと、輸入量または製造量が0.1トン/年以上の既有化学物質は全て、製造または輸入される前に予め「毒管法」に基づく第一段階既有化学物質登録を行う義務が課せられています。しかし、登録に必要な資料は、登録者の基本情報、化学名(英語及び中国語)、年間取扱量及び用途などを含む最も基本的な情報で良いとされます。集められた基本情報に基づき、取扱量が多く、かつ高い危険有害性を有すると判定され、または詳しいデータが欠けている化学物質については、優先化学物質として第二段階登録対象物質に指定される可能性があります。優先化学物質リストに収載されていない化学物質は、第二段階登録は不要です。

図6-「毒管法」に基づく第一段階登録に必要な提出書類

 また、優先化学物質として指定されたものは、「毒管法」に基づく標準登録を行わなければならないとされています。優先化学物質リストは化学物質の危険有害性の程度に基づき3回に渡って順番に公表されます。関係当局によりますと、第二段階登録は4つのステップで行われることになっています。詳細については下表をご参照ください:

既有化学物質登録

適用範囲

第一段階

年間取扱量が0.1トン以上の全ての既有化学物質

第二段階

ステージ 1

第一回公表物質:10トン/年以上の化学物質

ステージ 2

第一回公表物質の中の1トン/年以上10トン未満の物質、及び第二回公表物質の中の10トン以上の物質

ステージ 3

第2回公表物質の中の1トン/年以上10トン未満の物質及び第三回公表物質の中の10トン以上の物質

ステージ 4

第三回公表物質の中1トン以上10未満の物質

 登録を行うには、物理化学的特性や毒性試験データや、ばく露及びリスク評価報告書などを提出する必要があります。提出書類の提出・審議後、化学物質が危険有害性に基づき4種類の毒性化学物質の1つに区分されます。詳細な実施規定については2014年にはガイダンス資料が発表される見通しです。

図7-「毒管法」に基づく既有化学物質登録

 連合登録

 新化学物質について、別々で登録することをお薦めします。潜在的な登録者に関しては、実情に応じて連絡登録を行うかどうかを判断するのが適切です。しかし、既有化学物質については、基本的には連合登録を行わなければならないとされています。同一の化学物質の連合登録者または前後にした登録者は、不要な試験データを避けるため、既に提出されている書類を活用することができます。それに関わる料金やコストの分配などについては、基本的には各登録者が協議の上で決められます。合意できず関係当局の介入が必要となる場合に限って、環境保護署が調整を行います。一方、商業秘密やコスト等の原因で連合登録ができない場合、環境保護署に事前確認させた上で個別登録を行うことが認められます。

 毒性化学物質管理

 現時点では、台湾の毒性化学物質リストに基づき管理されている物質は合計341物質あります。詳細については下記のとおりです:

  • 第一類毒性化学物質:116物質

  • 第二類毒性化学物質:101物質

  • 第三類毒性化学物質:74物質

  • 第四類毒性化学物質:119物質(最終更新:2020年12月18日

 毒性化学物質として指定される341物質は既に特定されており、台湾当局からの許可が得られているため、改正「毒管法」に基づく化学物質登録から免除されることになります。集計によりますと、現在、約5,000以上の事業者が毒性化学物質を取り扱っています。毒性化学物質リストに収載される化学物質を取扱う事業者は環境保護署に登録を行う必要はありませんが、毒性化学物質に関わる規定・規則に従う義務を果たさなければなりません。

 また、環境汚染または人の健康に被害を与える恐れがあるとして、台湾当局は第四類毒性化学物質について更に厳しい規制を図っています。改正「毒管法」に基づく第四類毒性化学物質に関わる規定は法規制正式施行日(2014年12月11日)一年後に発効します。第四類毒性化学物質の取扱については、取扱開始前、予め直轄市、県(市)レベルの主管機関からの許可が必要であるほか、化学物質の毒性情報や容器、包装、取扱場所及び施設における汚染防止対策の掲示、及び安全データシートの作成が必要となります。

(注:第一類、第二類および第三類の間には重複があります) 

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