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韓国生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律(K-BPR)

1.K-BPRの概要

 2011年に発覚した「加湿器殺菌剤事件」がきっかけで、市場に流通している生活化学製品及び殺生物剤のコンプライアンス推進のため、「生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律(K-BPR第15511号令)」は2019年1月1日より施行され、その修正案(K-BPR第17013号令)は2021年1月1日に発効しました。

 それ以来、韓国は生活化学製品の安全性調査、活性物質の予備登録・後期予備登録、リスク評価などの予防的管理法規体系を構築しました。

2.監督範囲

 殺生物剤(Biocide)及び生活化学製品(Consumer Chemical Products)は、K-BPR規制の管理対象となります。

殺生物剤

  • 活性物質(殺生物物質):有害生物を除去、無害化又は抑制する機能を有する化学物質、天然物質または微生物;

  • 殺生物製品:有害生物の除去などを主な目的として使用される製品(一つ以上の殺生物物質で構成される、又は混合物から殺生物物質を生成する製品);

  • 殺生物処理製品:製品の主な目的ではなく、有害生物などの付加的な目的のために殺生物物質を意図的に使用した製品。

生活化学製品

  • 生活空間で使用される製品で、人や環境に化学物質の暴露を引き起こす可能性があるもの;

  • 環境部長官が危害性評価を行った結果、危害性があると認められ、指定・告示された安全確認対象生活化学製品。

3.殺生物剤

3.1 活性物質(殺生物物質)

3.1.1 既存物質・新規物質

 2018年12月31日まで韓国市場に出回った殺生物物質は、既存物質と見なされます。それらの物質の製造・輸入者はK-BPR発効後引き続き該当物質を取り扱いには、予備登録或いは後期予備登録を通して、正式登録までの猶予期間を獲得する必要があります。

 一方、既存物質リストに含まれていない物質は、新規物質と見なされます。新規物質については、猶予期間がなく、企業は韓国に生産または輸出する前に承認を得なければなりません。

3.1.2 既存活性物質のコンプライアンス流れ

3.1.3 承認申請

 活性物質を製造又は輸入し、殺生物製品に使用しようとする者は、次の事項を記載した申請書を環境部長官に提出し、承認を受けなければなりません。

1.物質の承認申請者の氏名又は商号、住所、連絡先;

2.活性物質の名称、分子式や化学構造などを含む識別情報;

3.活性物質を使用できる殺生物製品の種類;

4.活性物質に関する情報:

  • 物理的、化学的又は生物学的特徴;

  • 活性物質の用途、主なばく露経路やばく露パターン等を含むばく露情報;

  • ヒト・動物・環境に対する危険性及びリスクに関する情報;

  • 効果及び効能;

  • 分類及び表示。

5.次のいずれかに該当する場合、当該事実を証明する資料;

  • 承認対象となる活性物質が使用目的又は使用の範囲が限定されているため、人又は環境へのばく露の可能性が低い場合;

  • 承認対象となる活性物質を代替する低リスク物質が存在しないので、当該活性物質を公衆衛生及び環境保護のために使用する必要がある場合。

6.活性物質の製造に使用される成分や製造工程など、大統領令に定めたその他のデータ;

7.第1項から第6項までのデータに基づいて評価された活性物質の安全性に関する総合データ。

3.1.4 承認猶予期間

 K-BPRでは、既存活性物質が4つのグループに分類され、製品の種類に応じて承認の猶予期限日が定められています。製造者/輸入者にとって、相応の猶予期限日の前に承認を取得しない場合、それ以降はこれらの既存活性物質及び関連製品が韓国で製造・輸入・販売できなくなります。

 2022年12月31日、グループAに該当する消毒剤・除藻剤・殺鼠剤・殺虫剤・忌避剤に用いられる既存活性物質は、承認の猶予期限日を迎えました。

 一方、グループBの場合は、2024年12月31日に承認の猶予期間が終了します。しかし、承認申請書類の提出後の正式審査や技術評価等を含む承認手続きに18か月を要することを考慮し、申請者が2023年6月30日までに計画報告又は承認申請書類を提出できない場合には、2024年12月31日までの猶予期間中にグループBの活性物質の承認を取得することが困難であると韓国環境部(MoE)に判断されます。

注意:既存活性物質のみ猶予期間があり、新規活性物質は活性物質の承認が完了してから取引が可能です。

3.2 殺生物製品

3.2.1 殺生物製品の製品分類

 K-BPRに登録されている殺生物剤の製品類型は、以下の通りです。

カテゴリー殺生物製品のタイプ
消毒剤類PT1殺菌剤、消毒剤
PT2殺藻剤
駆除剤類PT3殺鼠剤
PT4その他の脊椎動物除去剤
PT5殺虫剤
PT6その他の無脊椎動物除去剤
PT7忌避剤
保存剤類(防腐剤)PT8製品保存用保存剤
PT9製品表面処理用保存剤
PT10繊維/皮革用保存剤
PT11木材用保存剤
PT12建築材料用保存剤
PT13資材/設備用保存剤
PT14死体/剥製保存剤
その他類PT15船舶水中施設防汚剤

3.2.2 認可手続き

 韓国市場に進出する殺生物製品を製造または輸入しようとする企業は、殺生物製品の認可を取得する必要があります。殺生物製品の認可申請の前提条件は、当該製品に含まれる活性物質そのものが承認を受けていることです。また、殺生物製品の認可には、活性物質の承認のための猶予期間に加えて、更に2年間の猶予期間が加算されています。

 殺生物製品の認可手続きにおいて要求される製品関連データは、以下の通りです。

1.殺生物製品の認可申請者の氏名又は商号、住所、連絡先;

2.殺生物製品の名称と種類;

3.殺生物製品に含まれる物質に関する情報:

  • 殺生物製品に含まれる活性物質を含むすべての物質の成分・組成比・使用目的・用途;

  • 殺生物製品に含まれる活性物質の供給者の氏名及び住所;

  • 意図的に殺生物製品に含まれるナノマテリアルの名称・使用目的・用途。

4.殺生物製品に関する情報:

  • 物理的、化学的又は生物学的特徴;

  • 活性物質の用途、主なばく露経路やばく露パターン等を含むばく露情報;

  • ヒト・動物・環境に対する危険性及びリスクに関する情報;

  • 効果及び効能;

  • 分類及び表示。

5.次のいずれかに該当する場合、当該事実を証明する資料;

  • 認可対象となる殺生物製品が工業用にのみ使用される場合;

  • 認可対象となる殺生物製品を代替する低リスクの製品が存在しないので、当該殺生物製品を公衆衛生及び環境保護のために使用する必要がある場合。

6. 殺生物製品の製造に使用される成分や製造工程など、大統領令に定めたその他のデータ;

7. 第1項から第6項までのデータに基づいて評価された殺生物製品の安全性に関する総合データ。

3.2.3 殺生物製品の申告/承認番号の明記

 2022年2月10日、韓国環境部(MoE)が環境部令第972号「生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律(K-BPR)実施規則の一部を改正する法令」を公布しました。これにより、韓国国内の製造者または輸入者は、殺生物製品の申告/承認番号を広告および包装で明示することが義務付けられています。

1.実施日

  • 2021年7月1日前に申告した殺生物製品の場合は、2023年1月1日より施行;

  • それ以外の場合は、2022年8月11日より施行。

2.申告/承認番号を通じて、消費者はMoEの公式サイトにて、以下の関連製品情報を確認することが可能です。

  • 製造者または輸入者の連絡先;

  • 製品使用上の注意事項;

  • 成分と含有量を含む製品情報;

  • 危険有害性、暴露情報と許可された用途に関する情報。

3.3 殺生物処理製品

 殺生物製品を使用した殺生物処理製品は、承認を受けた殺生物製品を使用する必要があります。

ラベル要求

 韓国国内で販売又は流通している殺生物処理製品の製造者又は輸入者は、有害生物の除去等の効果・効能を消費者に伝える場合、環境部令で定めるところにより、当該殺生物処理製品の表面に、消費者に見やすい箇所に次の事項を表示しなければなりません。

1.殺生物製品は殺生物処理製品に使用される声明;

2.殺生物処理製品に含まれるすべての活性物質の名称と機能;

3.殺生物処理製品に使用される殺生物製品にナノマテリアルが意図的に含まれるという事実;

4.殺生物処理製品に使用される殺生物製品のリスク及び取扱い上の注意。

4.生活化学製品

4.1 K-BPRで指定された安全確認対象の生活化学製品

順番種類品目
1洗浄製品
  • 洗浄剤

  • 除去剤

2洗濯製品
  • 洗濯洗剤

  • 漂白剤

  • 柔軟剤

3コーティング製品
  • 光沢仕上げ用塗料

  • 特殊用途塗料

  • 錆防止剤

  • 潤滑剤

  • アイロン補助剤

4接着剤類
  • 接着剤

  • ギャップ・フィラー

5芳香製品
  • 芳香剤

  • 脱臭剤

6染料・塗装製品
  • 染色剤

  • 塗装剤

7自動車用製品
  • ウォッシャー液

  • 不凍液(エンジン)

8印刷製品
  • インクカートリッジとトナー

  • スタンプ台専用赤インキ

  • 修正液・修正テープ

9美容製品
  • 美容接着剤

  • タトゥー用染料

10殺菌製品
  • 殺菌剤

  • 除藻剤

  • 加湿器殺菌剤

  • 感染症予防用殺菌剤

11虫ケア製品
  • 殺虫剤

  • 医薬品殺虫剤

  • 忌避剤

  • 防疫用殺虫剤

  • 防疫用殺鼠剤

12防腐製品・防腐処理製品
  • 木材用保存剤

  • 防腐処理フィルター製品

13その他
  • キャンドル

  • 除湿剤

  • 人口雪スプレー

  • パフォーマンス用フォグ液

  • 加湿器用生活化学製品

4.2 安全確認対象生活化学製品コンプライアンス

安全基準確認

 生産者又は輸入者は安全基準により、指定される試験/検査機関で製品安全基準テストを行い、安全基準に適合するかどうかを確認し、確認結果を取得する必要があります。

安全確認通報

 生産者又は輸入者は安全基準確認後30日以内に、CHEMPを通じて韓国環境産業技術院(KEITI)に確認結果書のコピー、製品及び生産者情報、SDS及びラベルなどの資料を提出し、安全確認通報を行う必要があります。その後、韓国環境産業技術院(KEITI)は30日間で審査を完了し、申告証明書を発行します。

注意:K-BPRの下で指定された安全確認対象生活化学製品は、3年ごとに安全基準確認及び通報を受ける必要があります。この場合は、韓国国内の生産者又は輸入者だけ提出が可能で、唯一代表ORには適用されません(CL-JP記事)。

QRコード活用

 2022年6月、韓国環境部(MoE)は、QRコードの使用をK-BPRで指定された合計13種39品目の安全確認対象生活化学製品に拡大することを決定しました。安全確認通報を完了した生活化学製品のQRコードはCHEMPの公式サイトで掲載されます。そして、QRコードの読み取った内容には以下のようなものがあります(CL-JP記事)。 

  • 申告情報:許可番号、製品安全基準テストを行う試験機関、製品タイプ、申告証明書の発行日、安全基準、試験報告書の有効期限など;

  • 製品情報:製品名、用途、有効期限や注意事項など;

  • 成分情報:主成分、保存剤、アレルギー症状を誘発する可能性のある物質や界面活性剤など;

  • 製造者/輸入者の情報。

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