1.EU REACH規則とは
REACHとは「Registration(登録), Evaluation(評価), Authorisation(認可) and Restriction(制限) of Chemicals(化学品)」の略であり、「化学品の登録、評価、認可および制限に関する規則」を意味しています。
欧州連合(EU)REACH規則はEU域内の化学品を管理する欧州議会・理事会規則(EC)規則 No 1907/2006であり、2007年6月1日に施行され、2008年6月1日より本格運用が開始されました。その主な目的は、(1)化学品による不当なリスクから人の健康と環境を保護すること、(2)EU化学産業の競争力を向上させること、(3)動物実験を削減するために物質の有害性評価に関する代替法の開発を進めることが挙げられています。
1.1 化学品の分類
REACH規則における化学品は3種類があります:物質、調剤、成形品。
物質(Substance)
自然状態(存在している)或いは製造過程で獲得した化学元素とその化合物、その安定性を保持するための必要がある添加物および加工過程から生じた不純物を指します。ただし、当該物質の安定性に影響を与えず、またはその組成を変えずに分離することのできる溶剤は除かれます。
調剤(Preparation)
2種類またはそれ以上の物質からなる混合物または溶液を指します。
成形品(Article)
製造過程で獲得した特定な形状、表面またはデザインが化学組成よりその機能を大きく決定する物体を指します。
1.2 関連の義務
登録(Registration)
EU域内で1事業者あたり1トン以上の化学物質を製造・輸入する事業者は、当該化学物質を欧州化学機関(ECHA)に登録することが義務付けられています。その他、調剤中の化学物質および成形品から意図的に放出される化学物質も登録の対象となります。
評価(Evaluation)
ECHAとEU加盟国は登録書類の情報を評価し、登録書類の適合性と試験提案の品質を調べ、化学物質による人の健康や環境への影響を明確化します。その結果、必要に応じ、事業者に試験方法の見直し、追加試験の実施や追加情報の提出などを要請します。そして、登録時の情報と追加情報に基づく評価結果は認可や制限へと繋げられます。
認可(Authorisation)
評価で高懸念物質(SVHC:Substances of Very High Concern)と判定された化学物質から、認可対象物質が決定され、「認可対象物質リスト(REACH規則附属XIV)」に収載されます。そして、認可対象物質として付属書XIVに収載される場合は、日没日(Sunset Date)の18カ月前までに特定の用途ごとに認可を申請する必要があります。日没日以降は、認可を受けないと上市できなくなります。
制限(Restriction)
ECHAが実施したリスク評価の結果、人や環境に許容しがたいリスクがある場合には、その物質を「制限対象物質リスト(REACH規則附属書XVII)」に収載し、製造・上市・使用に制限を設けます。
1.3 影響を受ける事業者
EU REACH規則は、物質、調剤および成形品に含まれる化学物質の(1)EU域内の製造者又は輸入者、(2)川下使用者、(3)EU域外の製造者が指名する唯一の代理人(OR)(EU域内の自然人または法人)に関する特定の義務を規定しています。
2.登録
2.1 登録範囲
2.1.1 登録が要求される物質
EU市場での年間製造/輸入量が1事業者あたり1トン以上の物質そのもの又は調剤中の化学物質;
EU市場への成形品から意図的に放出され、かつ、年間1トンを超える量で含まれる化学物質;
2%w/w以上の構成成分(モノマーまたはその他の物質)、かつ、モノマーまたはその他の物質が年間1トン以上となる量で含まれるポリマー。
2.1.2 登録不要な物質
REACH規則が適用されない物質
放射性物質;
税関の監督対象となる物質:(1)税関関連法に基づいて設置された保税地域/保税蔵置場に置かれた物質、或いは関連の通関手続き履行のために置かれた物質、(2)税関当局の監督下に置かれた物質、(3)EU滞在期間中にいかなる処理または加工も受けない物質;
加盟国の選択によっては防衛の目的で使用される物質;
廃棄物;
単離されない中間体;
鉄道、道路、内陸水路、海路又は空路による輸送中の危険な物質。
登録が免除される物質
食品添加物、食品中の香味剤、飼料添加物および動物栄養剤として使用される物質;
人及び動物用医薬品に使用される物質;
付属書IV・Vに収載されている物質;
EU域内で回収された登録物質;
サプライチェーンの中の行為者によって輸出され、同じサプライチェーンの中の行為者によってEU域内へ再輸入される登録物質;
2.1.1に述べたもの以外のポリマー;
製品・プロセス指向研究開発(PPORD)目的に使用される物質:5年間の登録免除、さらに5年(医薬品、未上市品は10年)延長可能。
登録済みとみなされる物質
殺生物製品に含まれる活性物質;
植物保護製品に使用される活性物質、製剤補助剤、薬害軽減剤および相乗剤;
「欧州既存商業化学物質リスト(EINECS)」に収載され、届出のあった物質。
2.2 登録義務者
欧州化学機関(ECHA)に登録する必要がある者は、以下となります。
EU域内で製造、輸入する物質そのもの又は調剤に含まれる物質の総量が年間1トン以上の事業者;
EU域外の物質、調剤、成形品の製造者が指定するEU域内の唯一の代表(OR)。
*EU域外の企業は直接登録できません。
2.3 データ共有(Data sharing)
複数の登録義務者が同じ物質を登録する場合は、最後の手段となる脊椎動物試験の重複を避け、試験データを共有することにより企業のコストを削減することを目的として、登録者の間でデータ共有を進めます。
そして、共有が必要となるデータ・情報は以下となります。
同じ物質に関する脊椎動物試験のデータ;
同じ物質の潜在的な登録者が求める脊椎動物試験に関与しない情報。
2.4 情報の要求
登録義務者は、下記の登録書類を作成する必要があります。
技術一式文書(Technical dossier)
製造者または輸入者のアイデンティティ;
物質のアイデンティティ;
物質の製造および使用に関する情報;
物質の分類および表示;
安全な使用に関するガイダンス;
物質の固有特性の情報に関する調査要約書;
物質の固有特性の情報に関するローバスト調査要約書(必要に応じて);
物質の製造および使用に関する情報、分類および表示、物質の固有特性の情報に関する(ローバスト)調査要約書、および/または化学物質安全性報告書のいずれが、評価者によって審査されたかどうかに関する指摘;
試験の提案(必要に応じて);
1~10トン/年の物質に関する暴露情報;
企業秘密と見なされる情報に関する要求。
物質の年間製造/輸入量が10トン以上の場合:化学物質安全性報告書(CSR:Chemical Safety Report)
パートA:(1)リスク管理措置の概要;(2)リスク管理措置を実施しているという宣言;(3)リスク管理措置を通知しているという宣言。
パートB:(1)物質の特定および物理化学的特性;(2)製造および用途;(3)分類および表示;(4)環境中運命の特性;(5)人健康有害性有害性評価;(6)物理化学的特性の人健康有害性有害性評価;(7)環境有害性評価;(8)難分解性・生物蓄積性・毒性 (PBT)/高持続性・高生体内蓄積性物質(vPvB)の評価;(9)ばく露評価;(10)リスクの特性。
*混合物に含まれる物質の濃度がREACH規則第14条第2項で規定されている下限未満の場合は、化学物質安全性報告書を作成する必要がありません。
*食品接触物質・化粧品用途の場合は、化学物質安全性報告書における人健康の関連部分を取扱う必要がありません。
3.評価
3.1 概要
欧州化学機関(ECHA)とEU加盟国は事業者が提出した登録書類(ドシエ)をもとに評価を実施し、物質が人の健康や環境にリスクをもたらすかどうかを明確化します。
3.2 登録一式文書(ドシエ)評価
欧州化学機関(ECHA)による登録書類の評価には、下記の通りに2つの分野で行われています。
ドシエ提出時の試験提案または川下ユーザーの報告にある試験提案について審査を実施します;
ドシエ情報(登録情報)の適合性を確認します。
3.3 物質評価
欧州化学機関(ECHA)はEU加盟国と共同で、リスクベースアプローチを通じて、化学物質の優先順位付けを行うための基準を開発します。そして、当該基準に従い、ECHAは欧州共同体ローリング行動計画(CoRAP)を物質評価の優先対象リストとして作成します。
2012年2月、90物質を含む最初のCoRAP物質リストが公表されました。その目的としては、当該年度を含む今後3年間に評価する物質の製造・使用による人の健康や環境へのリスクを明確化することです。その後、毎年2月28日までにCoRAP物質リストの更新案がEU加盟国に提出される予定です。
4.認可
4.1 認可プロセス
認可とは、人の健康と環境へのリスクが高い物質を管理し、より安全な物質・技術への代替を促進するための制度です。認可プロセスを経て、候補となる高懸念物質(SVHC)の中から認可対象物質が選ばれ、REACH規則の附属書ⅩⅣに収載されます。その目的としては、人の健康と環境に深刻な悪影響がありそうな高懸念物質(SVHC)を十分に管理し、経済的・技術的に代替可能な物質や技術への代替を促進することです。
2023年4月12日、欧州化学品庁(ECHA)は、欧州委員会に対し鉛を含む8つの物質を認可対象物質リストに追加することを提案しました。これにより、認可対象物質は前回の59エントリーから67エントリーに上ることが予想されます。
4.2 高懸念物質(SVHC)の指定
次のような危険特性を持っている物質は、高懸念物質(SVHC)として指定される可能性があります。
「分類、表示、包装(CLP)に関する規則」に基づき、発がん性・変異原性・生殖毒性(CMR)区分1Aまたは1Bに該当する物質;
REACH規則の附属書XIIIに基づき、難分解性・生物蓄積性・毒性 (PBT)或いは高持続性・高生体内蓄積性(vPvB)に該当する物質;
CMR物質またはPBT/vPvB物質と懸念相当レベルの物質。
そして、下記の手続きを経て、高懸念物質(SVHC)が決定されます。
EU加盟国または欧州化学機関(ECHA)は、REACH規則の附属書XVに基づいた書類を作成することにより、高懸念物質(SVHC: Substances of Very High Concern)候補物質を提案すること;
ECHAは提案されたSVHC候補物質について、45日間の意見募集を行うこと;
SVHCとして決定された場合は、候補リスト(Candidate List)に収載されること。
候補リストの収録対象となるSVHCを0.1%(w/w)以上含有する場合は、下記の義務が課せられます。
SVHCが0.1%を超える物質または調剤の供給者は、REACH規則に従う安全データシート(SDS)を川下ユーザーに提供する必要があります;
SVHCが0.1%を超える成形品の供給者は、成形品を安全に使用するための情報(少なくとも物質名を記載)を川下ユーザーに提供する他、消費者から要求があった場合、同じ情報を45日以内に提供する必要があります;
2021年1月5日以降、SVHCが0.1%を超える成形品の供給者は、EUに上市する製品や部品に関するSVHC含有情報をECHAのSCIPデータベースに登録する必要があります;
成形品中のSVHC総量が1輸入者につき年間1トン以上である場合、EU域内の製造者、輸入者または唯一代表者(OR)はECHAへのSVHC届出を行わなければなりません(SVHCとして新たに追加された物質については、リスト収載後6ヵ月以内にECHAへの届出が必要)。
4.3 認可の申請
認可対象物質として附属書ⅩⅣに収載されると、日没日(Sunset Date)が設定されます。原則上、認可対象物質をEU域内で上市するためには、関連事業者は日没日の18か月(いわゆる「申請の最終日」)までに特定の用途ごとに認可申請を行った上で、ECHAから認可を取得しなければなりません。認可を受けないと、日没日以降は上市できなくなります。
5.制限
制限は、化学物質による許容できないリスクから人の健康および環境を保護するために導入され、2009年6月1日から無効となった「指令76/769/EEC(危険な物質及び調剤の上市と使用の制限)」で定められた制限が引き継がれたものです。登録要否にかかわらず、附属書XVIIに掲載されている物質そのもの、混合物または成形品に含まれる物質に対して、製造・上市・使用を制限する必要があります。
5.1 制限プロセス
EU域内で物質の製造・上市・使用に関する制限を導入するプロセスは、以下の通りです。
EU加盟国または欧州委員会は、制限の一式文書を準備する意図を公示する;
附属書XVの要件に沿った一式文書を公示後12カ月以内に作成し、ECHAに提出する;
ECHAのリスク評価専門委員会(RAC)及び社会経済分析委員会(SEAC)は、提出された一式文書が附属書XVの要件に適合しているか否かを審査する;
ECHAは、3の結果をウェブサイトにおいて公開し、欧州委員会に提出する;
欧州委員会は社会経済分析委員会(SEAC)からの意見を受け取ってから3カ月以内に、或いはSEACがREACH第71条で設定される期限の終了前に意見を作成しない場合、附属書XVIIの改正を行う。
5.2 制限対象物質
附属書XVIIに制限が設けられている物質そのもの、調剤または成形品中の物質については、制限条件に合致しない限り、製造・上市・使用が禁止されています。ただし、このことは科学研究開発目的の物質の製造・上市・使用に適用されません。
制限対象物質は随時更新され、2023年7月27日の最終更新により72エントリーに上りました。そして、物質の詳細はこちらです。
6.サプライチェーンにおける情報伝達
上述の登録、認可や制限などに関する義務とは別に、サプライチェーンでの化学物質情報の伝達義務があります。REACH規則では、化学物質の安全な使用を確保するために必要な情報を、安全データシート(SDS)等を通じて、サプライチェーンの川下に向けて安全性情報を伝達することが求まられています。
6.1 SDS
附属書XVIIに制限が設けられている物質そのもの、調剤または成形品中の物質については、制限条件に合致しない限り、製造・上市・使用が禁止されています。ただし、このことは科学研究開発目的の物質の製造・上市・使用に適用されません。
安全性データシート(SDS)はGHS国連文書に基づいて作成され、化学物質およびそれを含有する製品を(1)作業環境で使用する際、(2)関連事業者に譲渡・提供する際に交付する対象化学物質の危険有害性情報などを記載した文書です。
そして、SDSを作成する場合は正確な情報を伝達するために、次の項目を記載することが重要です。
記載項目 |
1.化学物質名および会社情報 |
2.危険有害性の要約 |
3.組成および成分情報 |
4.応急措置 |
5.火災時の措置 |
6.漏出時の措置 |
7.取扱および保管上の注意 |
8.ばく露防止および保護措置 |
9.物理化学特性 |
10.安定性および反応性 |
11.有害性情報 |
12.環境影響情報 |
13.廃棄上の注意 |
14.輸送上の注意 |
15.適用法令 |
16.その他の情報 |
ご注意:新SDS規制は2021年1月1日より施行され、移行期間が2022年12月31日に終了する予定です。そのため、企業は自分の状況に応じて、期間内にSDSを更新することをお勧めです(CL-JP記事をご参照)。
6.2 義務内容
川上事業者から川下事業者への情報伝達が義務付けられています。詳細は下表の通りです。
サプライチェーンの川下への情報伝達
下記の物質または混合物の供給者は、SDSを受領者に提供することが必要(REACH規則第31条)。
CLP規則に従って危険有害性があると分類される物質または混合物;
難分解性・生物蓄積性・毒性 (PBT)或いは高持続性・高生体内蓄積性(vPvB)を有する物質;
3.1及び2に記載された以外の理由で、高懸念物質(SVHC)リストに収録されている物質;
CLP規則のタイトルIとIIに従って有害危険性の分類基準に適合しないものの、以下を含む場合に該当するもの(ご注意:受領者の要請に応じて、SDSの提供が必要となる)。
(1)個々の濃度が、非ガス状の混合物の場合には1重量%以上、ガス状の混合物の場合には0.2容積%以上である他、人の健康又は環境に有害性を及ぼす物質が少なくとも1つある;
(2)非ガス状の混合物の場合には、個々の濃度が 0.1 重量%以上であり、次の区分に当てはまる物質が少なくとも1つある;
発がん性(区分2);
生殖毒性(区分1A、1B又は2);
皮膚感作性(区分1);
呼吸器感作性(区分1);
授乳に対するまたは授乳を介した影響;
授乳を介して影響がある物質;
付属書XIIIに定められた基準に基づいたPBT;
付属書XIIIに定められた基準に基づいたvPvB;
(1)に記載された以外の理由で、高懸念物質(SVHC)リストに収載されている物質。
(3)欧州共同体内の作業場でのばく露限界値が存在する物質。
SDS提供が必要とされない物質そのもの又は混合物に含まれる物質の供給者は、以下の情報を受領者に提供することが必要(REACH規則第32条)。
登録番号(入手可能であれば);
認可の適用に関する情報;
制限の適用に関する情報;
適切なリスク管理措置が特定・適用されることが可能となるためのあらゆる利用可能な情報。
変更があった場合、供給者はSDSを遅滞なく更新し、12カ月以内に受領者全員に更新された情報を紙面で或いは電子的に無料で提供する必要があります(REACH規則第32条)。
成形品の供給者は、次の義務がある(REACH規則第33条)。
0.1重量%を超える濃度で高懸念物質(SVHC)を含有する成形品の場合は、当該成形品が安全に使用できるための十分な情報(少なくとも物質名を含む)を提供することが必要;
消費者からの要求があった場合、その要求があった日から45日以内に当該成形品が安全に使用できるための十分な情報(少なくとも物質名を含む)を無料で提供することが必要。
サプライチェーンの川上への情報伝達
物質または混合物のサプライチェーンにおける各関係者は、川上にあたる上位関係者または流通業者に対して以下の情報を伝達することが必要(REACH規則第34条)。
用途を問わず、有害特性に関する新しい情報;
SDS記載のリスク管理措置の妥当性に疑問を起こす恐れのある情報(特定された用途についてのみ伝達されるもの)。
7.持続可能な化学物質戦略
2020年10月14日、欧州委員会(EC)は、「持続可能な化学物質戦略(Chemicals Strategy for Sustainability)」を採択しました。この戦略は、「欧州グリーンディール(European Green Deal)」で発表された有害物質のない環境に向けた汚染ゼロ目標に向けた第一歩である。
7.1 行動計画
本戦略は、安全で持続可能な化学物質のための技術革新を促進し、人の健康と環境保護に有害な化学物質への規制強化を求めるため、次の行動計画を掲げています。
消費者製品に含まれる最も有害な化学物質を禁止する(エッセンシャルユースの場合に限って、例外的にその使用を容認);
化学物質のリスク評価を行う際のカクテル効果を説明する;
エッセンシャルユースを除き、EU域内でペルおよびポリフルオロアルキル物質(PFAS)の使用を段階的に廃止する;
物質、材料、および/または製品のデザインとライフサイクル全体(原材料から最終処分まで)を通じて、より安全で持続可能な化学物質を製造・使用するための投資および革新的な能力を強化する;
重要な化学物質に関する供給回復力と持続可能性を促進する;
安全性評価プロセスを作成するためのより簡素な「1物質、1評価」プロセスを確立する;
EU域内で禁止対象となる化学物質を輸出せず、高い基準を推進することにより、世界で主導的な役割を果たす。
7.2 ECHAの役割
欧州化学機関(ECHA)は下記の主な措置を講ずることにより、持続可能な化学物質戦略を支援することを図っています。
安全で持続可能なデザイン基準を開発する;
REACH に混合物評価係数(MAF)の導入を検討する;
リスク評価を調整するための「1物質、1評価」プロセスを確立する;
汚染ゼロに向けた第8次環境行動計画に関するモニタリングの枠組みの一部として、化学物質の指標枠組みを開発する;
化学物質に関する戦略研究およびイノベーションアジェンダを更新する;
REACH規則およびCLP規則の改正計画に係る影響評価のための科学的・技術的サポートを提供する。
8.動物実験代替法
欧州化学機関(ECHA)は、主にデータ共有、代替試験法、既存データの収集と新規試験法の提案を通じて、不必要な動物試験を避けることを図っています。そのため、脊椎動物試験は登録の際に求められる情報を明確化する最後の手段としてしか行ってはなりません。しかし、データギャップを埋めるのは、新たな動物実験が必須の手段であることを意味します。
具体的にいえば、登録者は次に掲げる利用可能なすべての既存データを収集・評価し、データギャップを埋めることが可能であるかどうかを確認した上で、脊椎動物試験を用いる新たな研究を行うことができます。
in vivo試験;
動物由来の組織などを用いたex vivo試験;
細菌や培養細胞などを用いたin vitro試験;
ヒトへのばく露から得られる情報;
構造的に類似している物質からの情報に基づく予測(「読み取り法(read-across)」及び「化学物質カテゴリー(chemical categories)」;
定量的構造活性相関 (QSAR) 等の計算予測方法に基づく予測;
既存の文献。
9.PFAS類の制限
「持続可能な化学物質戦略」を踏まえて、EUは社会にとってかけがえのない用途を除き、すべてのPFASを段階的に廃止することに乗り出しています。
9.1 施行中
現在のところ、EU REACH規則に基づく既存のPFAS規制は、約200種類あると言われている9~14個の炭素鎖を有するペルフルオロカルボン酸 (C9-14 PFCAs)などを対象としています。下表をご参照ください。
制限の対象 | 規制措置 |
9~14個の炭素鎖を有するペルフルオロカルボン酸 (C9-14 PFCAs) | EU REACH規則附属書XVII(制限物質リスト)に掲載。 備考:規制措置の詳細はCL-JP記事をご参照ください。 |
EU REACH規則に基づき、高懸念物質(SVHC)リストに収録されているため、関連するSVHCの法的義務を履行することが必要。
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2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポキシ)プロピオン酸とその塩およびアシルハロゲン化物(HFPO-DA) | EU REACH規則に基づき、高懸念物質(SVHC)リストに収録されているため、関連するSVHCの法的義務を履行することが必要。
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ペルフルオロブタンスルホン酸(PFBS)およびその塩 | |
ペルフルオロオクタン酸(PFHpA)及びその塩 |
9.2 施行予定
制限の対象 | 規制措置 |
泡消火薬剤中のPFAS類 |
備考:規制措置の詳細はCL-JPデータベースをご参照ください。 |
PFHxAとその塩およびPFHxA関連物質 | PFHxA類は、制限物質リストに収載される候補物質です。収載されれば、PFHxA類はEU域内での使用が禁止 備考:規制措置の詳細はCL-JP記事をご参照ください。 |
PFASの全面禁止 | 約10,000種類のPFASsが製造、使用または上市禁止。 備考:規制措置の詳細はCL-JP記事をご参照ください。 |