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原因は「危険廃棄物」?!江蘇省“3.21”化学工場爆発事故の調査報告書が公開

 今年3月21日に中国江蘇省にある化学工場で起きた爆発は、78人死亡・76人重傷などをもたらす大惨事でした。近日、当局が立ち上げた調査チームが事故の調査報告書を公開しました。
 爆発現場は中国東部江蘇省塩城市響水(きょうすい)県にある社員195人の化学工場「天嘉宜化工有限公司」です。主な製品は、1,3-フェニレンジアミン・1,2-フェニレンジアミン・1,4-フェニレンジアミンを始めとする農業/染料/医薬品の原料です。
 調査報告書により、推定された発火から爆発までのプロセスは以下となります。

  1. 固体廃棄物倉庫に長期間置かれた「硝化廃棄物」が風通しの悪いなどの貯蔵条件により、自然発火;

  2. 火が「硝化廃棄物」全体の表面に蔓延することにより、内部の温度がいち早く上昇;

  3. 高温で激しい分解反応が発生、爆発。

 調査チームが専門の鑑定機関に依頼し、同社硝化処理後の廃水池から取った「硝化廃棄物」のサンプルを鑑定した結果、《国家危険廃棄物名録(現行:2016年版)》の「危険廃棄物」に当たることがわかりました。また、事故発生当時、固体廃棄物倉庫に貯蔵されていた「硝化廃棄物」は600トンに達することも明らかにしました。

 調査報告書には、同社の違法行為について数多く列挙した中、最も注目されているのは「危険廃棄物の長期貯蔵」です。《中華人民共和国固体廃棄物汚染環境防治法》の第五十八条により、危険廃棄物を貯蔵する際に、国の環境保護基準に満たした防護措置を取らなければいけない上、一年間を超えてはいけません。実情により、貯蔵機関を延長する必要がある場合、環境保護行政主管部門の許可を得なければいけません。しかし、今回の「天嘉宜化工有限公司」は、「硝化廃棄物」を危険廃棄物の貯蔵に適していない倉庫に貯蔵するだけではなく、その内、一部は7年間も貯蔵した事実も浮かび上がりました。

 このような重大な違法行為が78人の命を落としました。危険廃棄物の特性により、企業にとってその処理は時に難しい問題にもなります。問題をついつい先延ばした企業も少なくないでしょう。でも、今回の事故を経て、当局はもちろん、企業もこの問題を改めて向き合う時が来ています。Chemlinked Japanは《国家危険廃棄物名録(2019年改訂案)》のこれからや、《固体廃棄物汚染環境防治法(2019年改正)》の変化など役立つ情報を発信する予定です。企業の情報収集の負担を減らし、事故を防ぐために少しでも役割を果たせばと思います。

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