中華人民共和国 | |
生態環境部第12号令 | |
新化学物質環境管理登記弁法 – 「中国版REACH」 | |
主管部門 | |
生態環境部(MEE) | |
法令期日 | |
公布日 | 2020年4月29日 |
施行日 | 2021年1月1日 |
沿革 | |
2003年10月15日 | 元・国家環境保護総局第17号令 −−−新化学物質環境管理弁法 (廃止) |
2010年10月15日 | 前・環境保護部第7号令 −−−新化学物質環境管理弁法(廃止) |
2021年1月1日 | −−−新化学物質環境管理登記弁法(現行) |
主な関連規制 | |
2004年4月13日 | 化学品試験のガイドライン(HJ/T 153-2004) |
2008年1月15日 | 新化学物質申請類似名生成ガイドライン |
2020年10月26日 | 新化学物質環境管理登記に関する接続事項の公告 |
2020年11月16日 | 新化学物質環境管理登記指南 |
2020年11月16日 | 新化学物質環境管理登記付随表および記入説明 |
2020年12月24日 | 化学物質の環境と健康危害評価に関する 技術ガイドライン(試行) |
化学物質の環境と健康曝露評価に関する 技術ガイドライン(試行)(同上) | |
化学物質の環境と健康リスク特性評価に関する 技術ガイドライン(試行)(同上) | |
2024年3月21日 | 化学物質環境管理命名規範(HJ 1357-2024) |
2018年3月に開始した中国第8次国務院機関改革により、前・環境保護部(MEP)は再編され、新設する生態環境部(MEE)に機能を移しました。MEEはその後、2010年1月19日に前・環境保護部が公布した《新化学物質環境管理弁法》(環境保護部令第7号)が実施する過程で浮上した問題点と国内外の化学品管理の実情を鑑み、改正作業を続きました。
2020年4月29日、国内の新化学物質の環境管理登記行為を規範化し、新化学物質の環境リスクを科学的かつ効果的に評価・管理するために、中国の生態環境部(MEE)は、関連する法律および《国務院が必要とする行政承認項目に行政許可を設定する決定》に基づき、《新化学物質環境管理登記弁法》を制定し、部令第12号として公布しました。
《新化学物質環境管理登記弁法》(以降、12号令と呼ぶ)は2021年1月1日から正式に施行され、前・環境保護部が公布した《新化学物質環境管理弁法》(環境保護部令第7号)は同時に廃止されました。
2020年11月16日、12号令の施行をサポートするため、環境保護部令第7号の最も重要な下記法規制である《新化学物質環境管理登記指南》も改正されました。改正後の指南は12号令と同日に施行されることになりました。
12号令は「中国版REACH」と呼ばれるものの、主に新規化学物質を対象に製造・輸入前の登記または備案(後述)の要件を定めています。一方で、EU-REACHのような既存化学物質に関するコンプライアンス義務はほぼありません。
本ページでは、12号令に関連する対象範囲、物質インベントリ、登記・備案時の要件などについて、基礎知識を中心にご紹介いたします。
対象物質
新化学物質(「中国現有化学物質名録(IECSC)」に収録されていな化学物質)
「中国現有化学物質名録(IECSC)」に収録されていますが、新用途環境管理対象化学物質と指定され、且つ、許可用途以外の工業用途に使用される化学物質。
「中国現有化学物質名録」の収録数は2024年5月20日までの情報です。
中国現有化学物質名録(IECSC)
「中国現有化学物質名録(IECSC)」は、中国の新規化学物質に該当するかどうかを判断する基準であり、中国市場に参入する際には確認が必須です。現行は2013年1月14日に前・環境保護部より発行されたIECSC 2013年版です。IECSC 2013年版には、1992年1月1日から2003年10月15日までに中国国内で製造、加工、販売、使用、または輸入されていた化学物質が収載されています。公布当時、合計45,612物質が含まれており、そのうち情報が完全に公開されたものは42,342物質、企業秘密を理由に中国語、英語の一般名とシリアル番号しか公開されていないものは3,270物質あります。
現在、IECSCは2013版をベースに動的に更新されています。2013年の初版公開してから2024年5月20日まで合計24回の収録物質拡大が行われ、1,399物質がIECSCに追加されました。特に12号令が2021年1月1日から施行された以降、MEEの元でIECSC収録物質の拡大が常態化されています。
IECSC収録物質の拡大は、2種類に分けることができます。一つは「新規加入」で、もう一つは「増補」です。「新規加入」とは、新化学物質登記が完了した物質が条件を満たした場合、中国の既存化学物質として認められ、IECSCに追加されることを指します。一方、「増補」とは、該当物質が2003年10月15日までに中国国内で製造または輸入された実績があるにもかかわらず、IECSC 2013年版作成当時には収録されていなかったものが、その後の増補申請を通じてIECSCに追加されることを指します。
物質数 | |
IECSC 2013年版 | 45,612(機密物質:3,270) |
2024年5月20日までの収録物質拡大(新規加入+増補 計:24回) | 1,399(機密物質:304) |
合計: | 47,011(機密物質:3,574) |
IECSCに機密物質が存在するため、一般の方法で自社が取り扱う物質が中国での新規化学物質かどうかを100%判断することは難しいです。無駄な登記作業を回避するために、企業はMEEの下部組織である固体廃棄物および化学品管理技術センター(MEE-SCC)に機密物質の該当確認を申請することができます。行政費用は1物質あたり3,000 RMBです。
免除(対象外)物質
医薬品(原薬を含む)、農薬(農薬原薬を含む)、動物用医薬品(原薬を含む)、化粧品、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、肥料などの製品;
*ただし、上記製品が他の工業用途に変更される場合、および上記製品の原料または中間体として使用される場合、新化学物質に該当し、「12号令」が適用されます;
放射性物質;
天然に存在する物質;
商業目的ではないまたは意図的に生産されていないカテゴリ(不純物、反応副生成物など);
その他の特殊カテゴリ(ガラス、陶器、合金、非分離中間体、物品など)。
対象活動
中華人民共和国国内で新化学物質の研究、生産、輸入および加工使用活動が対象となります。
* 輸入後、税関の特別監督区域に保管され、いかなる加工使用も行わずにすべて輸出される新化学物質を除く
対象事業者
中国国内で新化学物質の生産または輸入を行う企業・事業体;
中国国内に新化学物質を輸出する生産または貿易企業;
* 海外企業は中国国内の企業・事業体を代理人として指定し、共に義務と責任を履行する必要がある
* 香港特別行政区、マカオ特別行政区および台湾地区の輸出業者は、海外申請者に該当する
医薬品、農薬、化粧品などの製品が新化学物質に該当し、かつ他の工業用途に変更しようとする生産者、輸入者または加工使用者;
新用途環境管理を実施する化学物質を、許可された用途以外の他の工業用途に使用しようとする関連化学物質の生産者、輸入者または加工使用者。
登記(備案)の種類
備案 | 1)年間生産量または輸入量が 1トン未満の場合; 2)新化学物質モノマー或いは反応体含有量が2%以下のもの、または低懸念ポリマーに属するもの(トン数制限なし) *通常ポリマーが1トン未満/年の場合、一般物質の備案として必要な資料を提出するだけでよい。 |
簡易登記* | 新化学物質年生産量或いは輸入量が1トン以上10トン未満 |
常規登記* | 新化学物質年生産量或いは輸入量が10トン以上 |
新用途管理登记 | 「中国現有化学物質名録」に記載されているが、新用途環境管理を実施する化学物質で、許可用途以外の他の工業用途に使用されるもの |
*簡易登記と常規登記には、「シリーズ登記」と「共同登記」という2つの特殊な形式があります。 |
提出書類一覧
データ要件
备案
一般物質備案:データ要件なし;
ポリマー備案:ポリマーの安定性(酸化、水解、熱、光照射、溶媒または微生物などの作用)、吸水性(Mnが10,000 以上の場合)のデータを事前に用意することを推奨します。
*Mn: 数平均分子量
簡易登記/常規登記
備考:
•非P非B物質:持続性および生物蓄積性を持たない物質。
•PまたはB物質:持続性または生物蓄積性を持つ物質。
•PかつB物質:持続性および生物蓄積性を持つ物質。
簡易/常規登記:物理化学的性質最低データ要件
簡易/常規登記:健康・生態毒物学最低データ要件
備案/登記後の義務
備案/登記の種類によって、その後の関連義務はそれぞれ異なり、登記証所持者・備案申請者・加工使用者は下記のように義務付けられています。
義務種類 | 内容 |
基本要求 | 登記証所持者・備案申請者・加工使用者は登記証の内容に応じ、関連活動を行い、登記証の譲渡は禁止である。新化学物質の研究者・生産者・輸入者・加工使用者は環境リスク管理制御措置及び環境管理要求を確実に実施する。 |
情報伝達 | 新化学物質の生産者、 輸入者、加工使用者は川下の最後加工使用者まで情報伝達する; 伝達内容:登記証番号或いは備案受付番号、申請用途、新化学物質の危害特性と環境リスク制御措置、環境管理要求; 一方、加工使用者はサプライヤーに関連情報の提供も要求できる。 |
初回活動報告 | 常規と簡易登記証所持者或いはその代理者は初回生産・輸入から六十日以内に提出する。 |
年次報告 | 常規登記証に年次報告提出が要求される場合、登記証明証所持者或いはその代理者は翌年4月30日前に提出する。 |
情報公開 | 新化学物質の生産者と加工使用者は関連公式サイト/その他の方式により環境リスク制御措置と環境管理要求の実施状況を公開し、且つ適時に更新する。 |
新危険有害性と環境リスク追跡 | 新化学物質の研究者、生産者、輸入者と加工使用者は新しい環境或いは健康危険有害性或いは環境リスクを見つけた場合、即時生態環境部に報告する。環境リスクの増加を引き起こす可能性がある場合、即時に措置を取り、環境リスクをなくす/低減する。 |
資料保存 | 新化学物質の生産者、輸入者、加工使用者は新化学物質活動状況の記録制度を制定し、実際の活動時間・数量・用途、及び環境リスク制御措置・環境管理要求などの実施状況を記録する。 常規と簡易登記の申請資料、初回と年次活動報告、情報伝達資料などは十年以上保存し、備案の申請資料及び活動状況記録等資料は三年以上保存する。 |
備案に関する留意点:
備案の申請者が資料を提出すると、オンライン登録システムが自動的に備案受付通知を送信します。申請者は受付通知を受け取った後、直ちに関連する活動を開始することができます。国務院の生態環境主管部門は、所属の化学物質環境管理技術機関を通じて、備案資料の適合性についてランダムに抜き取り検査を行います。検査の結果、申請者の資料が要求に適合していない場合や、条件を判定するのに不十分であると判断された場合、申請者には一度だけ追加資料を提出する機会が与えられます。その後、適合性審査が再実施されます。一方、対象物質が備案の条件を満たさず、常規または簡易登記証が必要であると判断された場合、備案は取り消されます。その場合、申請者は法的責任を負うこととなり、新化学物質環境管理の常規または簡易登記証を申請する必要があります。
よくある質問
質問1:7号令の下で取得した新化学物質簡易登記証は12号令の備案に変更する必要があるかどうか?
回答:「新化学物質環境管理登記弁法」(生態環境部令第12号、以下は弁法と略称)の第53条の規定によると、「新化学物質環境管理弁法」(環境保護部令第7号令、以下 7 号令と略称)と「新化学物質環境管理弁法」(国家環境保護総局第17号)の規定に従って新化学物質環境管理登記を完了した場合、関連登記は「弁法」が発効された後も引き続き有効です。7号令の下で取得した簡易登記証は、「新化学物質環境管理登記の連関移行事項に関する公告」(生態環境部公告 2020年第46号)の関連規定に準拠するものとします。
質問2:7号令下の常規申告物質は、登記完了5年後に「中国既存化学物質」として収録されますか?また、12号令に基づいて「中国現有化学物質名録」に収録されるためには、企業は申請書を提出する必要がありますか?
回答:「新化学物質環境管理登記指南」(生態環境部公告2020年第51号)の規定により、「新化学物質環境管理弁法」(環境保護部令第7号)の規定に従って新化学物質登記証明書を取得し、「中国現有化学物質名録」(以下、名録と略称)に収録されていない新化学物質については、2021年1月1日までに実際の生産または輸入活動がある場合、初回の生産日又は輸入日から5年後、国務院生態環境主管部門によって名録に収録されます。
2021年1月1日までに、実際の生産または輸入活動がない新化学物質については、「新化学物質環境管理登記弁法」(生態環境部第12号令、以下は弁法と略称)が実施されてから5年後、国務院生態環境主管部門によって名録に収録されます。
弁法の規定に従って常規登記証を取得した新化学物質については、初回登記日から5年後、国務院生態環境主管部門によって名録に収録されます。
上記の規制を満たすすべての化学物質は、国務院生態環境主管部門によって名録に収録され、企業は申請書を提出する必要はありません。
質問3:当社は、「中国現有化学物質名録」に収録されていない化学製品を取り扱っています。もし備案を申請した場合、名録に追加されるのでしょうか?
回答:いいえ、追加されません。新化学物質環境管理登録弁法(生態環境部令第12号)の第44条では、簡易登記・備案した新規化学物質は名録に収録しないと規定されています。
質問4:12号令施行後、どの種類の登記済み新化学物質は年次報告書を提出する必要がありますか?年次報告の提出時期と内容の範囲について教えてください。
回答:新化学物質環境管理登記弁法(生態環境部令第12号)(以下、12号令)及び新化学物質環境管理登記に関する接続事項の公告(生態環境部2020年公告第46号)の規定により、新化学物質環境管理弁法(前・環境保護部令第7号)の第3条に規定する重点環境管理危険類の新規化学物質及び12号令に基づき承認された常規登録証の中、環境管理要件に年次報告書の提出が記載されている新規化学物質については、年次報告書の提出が必要です。
年次報告書の提出は、登記が許可された年の翌年から、毎年1月1日から4月30日までの間に提出するものとします。報告範囲は、年次報告を提出する年度の前年度における生産または輸入の実績、環境への排出状況、環境リスクコントロール措置および環境管理要件の実施状況となります。