タイ有害物質法(Hazardous Substance Control Act, HSCA)

 タイにおいて、化学物質による人及び環境に与える影響を抑えるために、工業省(Ministry of Industry:MOI)の下部組織である工場局(Department of Industrial Works:DIW)は化学物質・有害物質管理に関わる最も重要な2つの法規制を公布しました。その中の一つ、タイ有害物質法(Hazardous Substance Control Act, B.E.2535、以下「HSCA」という)は1992年4月7日から施行されています。

 HSCAの主要な目的は下記の通りです。

  • 有害物質が資格を有する者に限って処置、運輸及び廃棄されることを確実にする;
  • 「揺りかごから墓場まで」(from cradle to grave)というコンセプトを徹底する。サプライチェーンを全面的に管理することによって有害物質の誤用及び濫用を防ぐ。

 HSCAによりますと、化学物質は第1種から第4種 に分類され、それぞれ申告、登録、GHS等に関わる義務が課せられています。製造、輸入、所有(販売、使用、貯蔵、運輸及び廃棄)等の分野まで関わっています。

 
タイにおける化学物質管理法規制:
有害物質法
採決省庁 工業省工場局(DIW)
沿革
1992 (代替された) 有害物質法(第1版)
1995 有害物質法(第2版)
2008  有害物質法(第3版)
重要な下位法令
2012 Notification of MOI B.E. 2555
2010 Notification of DIW B.E. 2553
2008 Notification of DIW B.E. 2551
2004 Notification of MOI B.E. 2547
1994 Ministerial Regulation B.E. 2537
2000 Notification of MOI B.E. 2543
2013 Notification of MOI B.E. 2556

DIW - Dept. of Industrial Works under Ministry of Industry (Thailand)

目次

 

2. 沿革

 HSCAは1992年より施行され、それと同時に「有毒物質法」(Toxic Substance Act, B.E. 2510)及び「有毒物質法第2号」(Toxic Substance Act (No.2), B.E. 2516) が廃止されました。現時点では、2008年に改訂されたHSCA第3版が最新版となっています。

3. 主管機構

 HSCAの施行は工場局(DIW)、農業局(Department of Agriculture:DOA)、水産局(Department of Fisheries:DOF)、食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)、エネルギー事業局(Department of Energy Business:DOEB)及び畜産振興局(Department of Livestock Development: DLDを含む6部署が関わっています。また、タイでは、同一の化学物質は用途によって別々な行政機関によって管理される場合があります。

 表1. タイにおける化学物質管理に関わる主管機関及びその管理範囲

所轄機関

省庁

管理範囲

工場局(DIW)

工業省(Ministry of Industry)

 工場及び工業化学物質の取扱

  • 工場法(The Factory Act B.E. 2535 (1992))
  • 有害物質法(The Hazardous Substance Act B.E. 2535 (1992))

農業局(DOA))

農業・協同組合省(Ministry of Agriculture and Co-operatives)

農薬用化学物質

食品医薬品局(FDA

保健省(Ministry of Public Health)

消費者化学製品

水産局(DOF)

農業・協同組合省

水産業用化学物質

畜牧署(DLD)

農業・協同組合省

畜産業用化学物質

エネルギー事業局(Dept. of Energy Business:DOEB)

エネルギー省(Ministry of Energy)

液化石油ガス(LPG)及び天然ガス自動車(NGV)

 

4. 影響を受ける事業者

 有害物質を製造、輸出入、所有(販売、使用、貯蔵、運輸及び廃棄)するものは全てHSCAに従わなければなりません。

5. 適用範囲

5.1 定義:

 下記のいずれかに該当するものはHSCAに定められる有害物質となります:

  1. 爆発物(explosive)
  2. 引火性物質(inflammable substance)
  3. 酸化剤及び過酸化物質(oxidizing agent and peroxide substance)
  4. 毒性物質(toxic substance)
  5. 伝染性物質(infectious substance)
  6. 放射性物質(radioactive substance)
  7. 変異原性物質(mutagen)
  8. 腐食性物質(corrosive substance)
  9. 刺激性物質(irritating substance)
  10. その他の人、動物、植物及び環境に危険をもたらす物質または化学品(other substances, whether chemical or else, which may be harmful to person, animal, plant, property or environment)

5.2 有害物質リスト:

 有害物質リストに収載されている化学物質はHSCAに基づく義務を果たさなければなりません。最新版有害物質リスト(B.E.2556)は2013年8月から施行されています。

 最新版有害物質リストには合計6つの付表1,585物質が収載されており、それぞれ異なる省庁によって管理されています。詳細についてはリストをご参照ください。

図1- HSCAに基づく有害物質リスト

  • 付表1 農業局:698物質
  • 付表2 水産局:21物質
  • 付表3 畜産振興局:36物質
  • 付表4 食品医薬品局:258物質
  • 付表5 工場局:570物質
  • 付表6 エネルギー事業局:2 物質

5.3 化学物質の分類

 HSCAは下記4つの要素に基づき、化学物質を第1種から第4種までに分類しています:

  1. 化学物質の毒性データ及び危害性:急性影響、慢性影響、半数致死量、発がん性、可燃性または爆発性等;
  2. 国際規約に定められる義務。例えば、「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」(Montreal Protocol on Substances that Deplete the Ozone Layer)に基づき、クロロフルオロカーボン(CFCs)は第3種有害物質として指定されている;
  3. タイ国内の工業生産で原材料として使われる有害物質については、毒性または有害性がより少ない化学物質に代替されることができない場合、該当する物質は一時的に第3種有害物質として取り扱われるほか、その他の安全措置を講じるよう命じられる;
  4. 厳しく管制する必要のある有害物質については、HSCA以外に他の法規制に管制されていない場合、HSCAが所管することになる。

 DIWが公布した添付5は、第1種~第4種までの化学物質が収載されているほか、化学物質が有害物質とされる閾値も定められています。一般的に、特別な説明がない場合、下限値は1%と定めています。

6. コンプライアンス

6.1. 各種の化学物質の義務

第1種:

 製造業者および輸入業者は、当局に製品の情報を届出なければならない。また、事業者は、製品の製造および保管について指定されている基準および手続 (ラベル表示、規則および条件など)を遵守しなければならない。

第2

  • 当局に登録し、届出し、指定された基準および手続を遵守しなければならない。;
  • 製造、輸入、輸出及び保管はB.E. 2538 (1995)に基づき届出すること;
  • 製造、輸出入量及び保管量はDIWの規定に従って届出すること。

第3

  • 当局に登録し、ライセンスを取得し、届出なければならない。;
  • 対象となる有害物質の生産、輸入および保管のためのライセンスの申請書を提出すること;
  • 工製造、輸出入量及び保管量はDIWの規定に従って届出すること。

第4

 生産、輸入、輸出および所有 (保管) は禁止されています。

 各種の化学物質についての規定は図2のようにまとめられています。

図2 - 4種の化学物質に応じた義務

 

 

 

 

 

 

 4種の化学物質に関わる要求、免除要件などについては図3をご参照ください。

6.2 4種の化学物質に関する詳細要求

图3 - HSCA的关键要求和范围

登録

適用される化学物質 適用される事業者
第2種、第3種 製造者、輸入者

 第2種、第3種有害物質を製造または輸入する事業者または個人はDIWやその他のMOIが指定する機関に登録を行なわなければなりません。

 登録時、申請表と共に下記情報(「有害物質の登録に関する工業省公示(B.E. 2543)」添付)

  1. 表WoAo./AoKo.3またはISO 11014-1に適合したMSDS
  2. 有害物質の詳細説明
  3. 容器・タンクを説明する資料または写真
  4. 容器の安全措置を説明できる資料または写真(ある場合)
  5. 分析用有害化学物質見本または
  6. DIWが認可する分析試験所から出した分析結果または有害物質の詳細に関する証明文書

 上記3、4の代わり、見本を提出することが認められます。一方、分析結果及び証明文書は指定される機関が作成しなければなりません。

 下記のいずれかに該当するものは登録義務から免除されます:

  • 登録済の有害物質
  • その他の法律によって製造または輸入が認められる有害物質
  • 有害物質に関する明確で信頼性のある情報がある

届出

適用される化学物質 適用される事業者
1種、第2種、第3 製造者、輸出入者、所持者

許可証(「部長級法規B.E. 2537 (1994)」)

適用される化学物質 適用される事業者
3 製造者、輸出入者、所持者

第3種有害物質の製造者、輸出入者及び所持者は許可証を取得する義務が課せられています。製造者、輸入者、輸出者、所持者及び保管者が記入する申請表はそれぞれ異なっています。また、事業者または個人が既に有害物質の製造許可、輸入許可または輸出許可を取得している場合、その有害物質に関する所持者許可証は免除されます。

ライセンスを取得するため、事業者または個人は下記基本情報を提出しなければなりません:

  • 輸入者:企業名、住所及び商用ライセンス
  • 化学物質鑑定:製品名、化学名、輸出入量、原産地、製造会社及び運輸方法
  • MSDS(工業用化学物質)、efficacy trial、残留試験(residue trial)、品質分析(quality analysis)、毒性データ評価(殺虫剤)
  • 倉庫:住所、所在地、倉庫の構造及び労働安全衛生に関する保護・予防措置

 許可申請の流れ

 許可申請書を提出後、当局は必要資料の完備性について確認する上で現場調査を行います。具体的な流れは図4までご参照ください。

図4 -許可申請の流れ

 製造者については、製造現場、貯蔵施設、設備及び資料の正確性が検査項目となっています。輸出者、輸入者及び所持者は貯蔵施設及び資料の正確性について検査が行われることになっています。

 関連責任

 現場における安全施設

許可証取得後、製造者、輸入者、輸出者または所持者は緊急用シャワー、緊急用洗眼器などを含む安全施設、個人用防護具(PPE)、応急処置マニュアルが搭載される救急箱などを配置しなければなりません。

運輸

 許可の受取人が同時に有害物質の輸送業者でもある場合、輸送工具の両側にもMSDSまたは有害物質の危険有害性を表示するラベルまたは標識を貼り付けなければなりません。

事前届出 「有害物質の登録に関する工業省公示(B.E. 2543(2000))」に定められる輸送に関わる内容は「工業省公示(B.E. 2547 (2004))に代替された。)

適用される化学物質 適用される事業者
工業省告示 B.E. 3542 ( 2000)の付属書類に指定された物質 製造者、輸出入者、所持者

 輸出入届出

 「工業省公示(B.E. 2547 (2004))」に基づき、有害物質を輸送する都度通関前にDIWに輸出入届出を提出しなければなりません。

 通関前、輸出入業者がDIWに下記のような有害物質に関する情報を届出しなければなりません。

  • 化学物質鑑定:名称、化学式および割合、正式名称、慣用名あるいは略称(ある場合)
  • 輸入化学物質またはコンテナーの数量、コンテナーの特徴
  • 保管場所
  • 輸送方法
  • 課税港、到着/出港予定日
  • インボイス
  • 船荷証券(Bill Of Lading)
  • 規制化学物質の詳細書類

 100%成分情報開示

 DIWが評価する際、企業に100%の成分情報を開示するよう要求しています。事業者が一部の成分情報を営業機密として保留することができます。ただし、この場合、事業者が自分でリスクを負わなければならず、理由としては、DIWが事業者より提供する情報のみに基づき製品が有害物質であるかどうかを評価するため、事業者の選択がコンプライアンスの不完全性を引き起こす可能性があります。それゆえ、自分の製品を有害物質リストにおける物質と比較する方法が薦められます。

 輸入業者については、タイ税関が同様に100%成分の届出、事業者より提供する情報がSDSの情報と一致するよう要求していることをご注意ください。

 輸出入届出をどのように提出するか

 DIWが税関総署と緊密に協力し、届出を管理します。DIWが届出を記録した上で税関総署のデータベースに提出し、事業者が通関できるように援助します。

図5 - 輸出入届出の流れ

輸出入届出の提出は、下記のような二つの方法があります。

  1.  DIW独自の窓口サービス。このワンストップ窓口サービスにより15分ですべてのプロセスを完了することができます。
  2. オンライン申請提出http://haz2.diw.go.th/HazLicense/jsp/login/login_vk6.jsp

 製造者、輸出入者および所持者が主管部門に下記内容(WoAo./AoKo.7)を届出なければなりません。

  • 化学物質情報:名称、化学式および割合、正式名称、慣用名あるいは略称(ある場合)
  • 登録番号(ある場合)
  • 製造、輸出入または所持する数量、販売数量、顧客および購入目的

化学物質の製造、輸出入等については、それに相応する締切日までに主管部門に報告しなければなりません。

活動時間

締切日

1月~6月

同年7月

7月~12月

翌年1月

取扱者

 有害物質を適切に処理できるように確保するため、専門の責任者を指定する必要があり、その指定の過程が特定の標準および方法に従わなければなりません。具体的な方法は「有害物質を取り扱う事業者の施設における、工場局の認可に基づく、有害物質の安全な保存に関わる安全責任者の指名に関する工業省公示(B.E. 2551 (2008))、 Notification of DIW Re: Criteria and Method for Notifying and Registration of Specialized Person Responsible for Safety Storage of Hazardous Substance under Authorization of Department of Industrial Works and Reporting of Safety Storage of Hazardous Substance B.E. 2551 (Criteria and Method) と 「有害物質の安全な保管に関わる安全責任者の登録の検査に関する工場局公示(B.E. 2553 (2010))までご参照ください。

適用範囲:

  • 第1、2、3種の1000トン以上である有害物質の製造業者、輸出入業者
  • 貯蔵面積が300平米以上である有害物質の加工業者
  • 可燃危険物、酸化剤および過酸化物の製造業者、輸出入業者または加工業者

 免除:

 有害物質を水槽、サイロ、コンテナーに貯蔵する、または有害物質が低温液化液体である製造業者、輸出入業者または加工業者は免除対象となります。

GHS:

 適用範囲:DIWの規制名録に収録される有害物質のみに適用されています。(添付5)

 タイは2012年、 タイ工業省告示 「有害物質の分類および危険有害性情報の伝達システム(B.E.2555)」を公表しGHSの導入を開始しました。GHSの実施は2段階に分け、2013年3月13日から単一物質、2017年3月13日から混合物を対象として導入しています。

 DIWがタイで初めてGHSを実施する部門であり、情報によると、今後はFDAとDOLDもGHSの実施を開始します。

 分類とラベル

 タイGHSは、国連GHS改訂3版と同様に28項目の危険性分類を導入しており、そのうち、物理化学的危険性が16項目、健康有害性が10項目、環境有害性が2項目あります。

 物理化学的危険性

  • 爆発物
  • 可燃性/引火性ガス
  • 可燃性/引火性エアゾール
  • 酸化性ガス
  • 高圧ガス
  • 引火性液体
  • 可燃性固体
  • 自己反応性化学品
  • 自然発火性液体
  • 自然発火性固体
  • 自己発熱性化学品
  • 水反応可燃性化学品
  • 酸化性液体
  • 酸化性固体
  • 有機過酸化物
  • 金属腐食性物質

 健康有害性

  • 急性毒性
  • 皮膚腐食性/刺激性
  • 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性
  • 呼吸器感作性または皮膚感作性
  • 生殖細胞変異原性
  • 発がん性
  • 生殖毒性
  • 特定標的臓器毒性(単回暴露)
  • 特定標的臓器毒性(反復暴露)
  • 吸引性呼吸器有害性

 環境有害性

  • 水生環境有害性
  • オゾン層への有害性

 B.E.2555の表1では、28項目の危険性分類の条件およびそれ相応するラベル要素を掲示しています。

 SDS

 B.E.2555の表2では、16項目のSDSにより要求される内容を提示しています。

 公式検索窓口:

 輸送管理

  The Notification of MOI B.E. 2546 Announcement of the resolution of the Committee on Hazardous Substance, と B.E. 2545 (2002)をご参照ください。

6.3 コンプライアンスに関する義務(役割別)

 有害物質の製造業者

図6 -製造者の義務

  • 第1種:関係標準および手順の遵守
  • 第2種:登録―届出―貨物それぞれの輸出入届出
  • 第3種:登録―許可―貨物それぞれの輸出入届出

 

 

 

 

有害物質の輸入者

図7 - 輸入者の義務

  • 第1種:関係標準および手順の遵守
  • 第2種:登録―届出―貨物それぞれの輸出入届出
  • 第3種:登録―許可―貨物それぞれの輸出入届出

 

 

 

 

7. 今後の動向

7.1 HSCA改訂

 DIWは2013年、HSCAの改訂計画を開始し、各利益関係者に問い合わせ、現時点の障碍を確認し、現行版を改善することを旨とし、それと同時にほかの国家、例えば欧州連合、アメリカ、日本、中国および東南アジア諸国連合における化学物質管理法規も参考にしました。

 改訂可能の内容は下記の内容を含んでいます。

  • 範囲および定義に「輸送」という項目を追加します。(現行版には「輸入」と「輸出」のみ)
  • 科学研究に用いられる第四類有害物質が免除される可能性があります。

7.2 有害物質リストの改訂

 タイ工業省(MOI)が2015年2月19日、有害物質リスト(第2版)に関する通知B.E.2558(2015)を公表しました。通知によりますと、製造業者及び輸入業者が定められる条件に該当する化学物質について、タイ工業省工場局(DIW)に届出しなければなりません。DIWは、事業者からの提出資料を収集することで、現有化学物質リストを制定し、タイにおける化学物質に対してより適切な規制を実施することを図っています。

 届出は、危険化学物質の製造または輸入が定められたトン数を超えた後の60日以内に行わなければならず、インターネットまたはその他のMOIに許可される方式で届出情報を提出することができます。

 届出後、届出された物質が現有化学物質リストの新しい付属書類5.6に追加され、またHSCA B.E. 2535(1992)による4項のコンプライアンス義務を免除することができます。

 単一物質または混合物が届出される必要があるかどうかを判断するプロセスは右図の示した通りです。

7.3 全国規模のGHS実施について

 DIWは現在、GHSを実施する唯一の部門です。その他の部門、例えばFDAとDOLDも間もなく実施を開始します。ChemLinkedの情報によりますと、FDAはすでに利益関係者の討議に供する草案を制定しました。タイでは、全国におけるGHSの実施が確実に一致されるよう、GHS委員会を設立しました。

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