中国新化学物質環境管理弁法――中国版REACH

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環境保護部第7号令⇒12号令(移行中) | |
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新化学物質環境管理弁法 – 「中国版REACH」 | |
可決部門 | 環境保護部 |
主管部門 | |
沿革 | |
発布日 | 2010年1月19日 |
発効日 | 2010年10月15日 |
改正の経緯 | |
2003年10月15日 | 国家環境保護総局第17号令――新化学物質環境管理弁法 (切替え) |
主な関連規制 | |
2010年9月16日 | 新化学物質申告登録(2010年版) |
2011年7月22日 | 新化学物質申告登録標識情報技術要求(試行) |
2008年4月1日 | HJ/T 420 - 2008――新化学物質申告類名編制導則 |
2004年6月1日 | HJ/T 153-2004――化学品試験タイドライン |
HJ/T 154-2004――新化学物質有害性評価ガイドライン | |
HJ/T 155-2004――化学品試験合格実験室ガイドライン | |
Hidden |

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「新化学物質環境管理弁法」(環境保護部第7号令)は2003年版「中国新化学物質法」(China NCSN).の改訂版であり、2010年10月15日より正式施行されました。EU REACHの原則や内容等が多く採用されたため、EU REACHと比較して管理されている新規化学物質は極めて少ないにも関わらず、「中国版REACH」」という名前が付けられました。この呼び方の妥当性をめぐる論争は別として、「新化学物質環境管理弁法」(以下「弁法」という)は現在、業界内で幅広く採用されています。
2020年4月29日、中国生態環境部(MEE)が部令第12号の形で、「新化学物質環境管理登記弁法」を正式に公布し、2021年1月1日から、元・中国環境保護部(MEP)が2010年に公布した「新化学物質環境管理弁法(7号令)」の代わりに発効することになります。
本ページは「弁法」を対応する非中国系企業に向けて設置されたページです。
目次 |
沿革
図1 - 「新化学物質環境管理弁法」の沿革
7号令は、2003年10月15日より施行されていた「中国新化学物質法」 (旧国家環境保護部第17号令(以下「17号令」という))の重要の改正版です。新たな仕組みでは、旧「弁法」の根幹的な部分が残されたほか、EU REACHに基づくGHS分類、リスク評価、数量等級及び唯一の代理人など等、一連の新理念が導入されました。
2018年3月に開始した中国第8次国務院機関改革により、環境保護部(MEP)は再編され、新設する生態環境部(MEE)に機能を移しました。MEEはその後、7号令が実施する過程で浮上した問題点と国内外の化学品管理の実情を鑑み、改正作業を続きました。そして2020年に12号令を世に出しました。
申告が必要とされる物質
「弁法」は中国国内の新規化学物質について、登録制度を設けています。「弁法」に基づき、申告が必要とされる物質は下記のようになります:

図2 - 申告が必要とされる物質
- 「中国現有化学物質名録」 (以下「名録」という)に記載されていない新規化学物質;
- IECSCに記載されておらず、化粧品、医薬品、農薬、獣医用医薬品、添加剤、放射性物質等の生産に用いられる原材料 (成分)または中間体;
- 調剤又は混合物から生じ、かつ2003年以降(2003年度を除く)に製造された新規化学物質(例:界面活性剤、可塑剤、防腐剤、溶剤、難燃剤等);
- 固有の構造式をもたず、構成成分が変わりうる物質や複雑な反応をみせる新規化学物質;
- 低懸念ポリマー、及び一つ又はそれ以上のモノマーを有する低濃度(<2% w/w)ポリマー;
- 意図的に放出させるように設計された成形品に含まれる新規化学物質(例:芳香製品、インクカートリッジ、消火設備等)。
利害関係者
「弁法」は、中国環境保護部(環境保護部)、中国環境保護部化学品登録センター(CRC-環境保護部)、中国各省/市/県地方(地方自治体)に属する環境保護部のほか、多くの国と地方当局、または他の利害関係者に影響を及ぼしています。
- 中国環境保護部(環境保護部) :「環境保護部第7号令」(以下「7号令」という)の制定、施行を所管する部署であり、中国において新規化学物質の環境管理を統括する責任部署でもあります。
- 中国環境保護部化学品登録センター (以下「登録センター」という) :非政府組織で、「弁法」に対する日常管理、申告者から提出される書類の受理と処理等の業務を所管する環境保護部を支援するサブ研究機関です。
- • 評議審査委員会:「弁法」に関する書類(主に通常申告の関連書類)についての科学的な審査と評価を担当する委員会で、外部から採用した100名の専門家で構成されます。そのうち、化学、化学工学、毒性学、環境科学及び化学安全評価等の分野において試験・学術機関から選出された専門家が主要メンバーで、任期は3年間となり、2013年までに任期終了予定となっています。また、専門家の名簿は機密として取り扱っています。
- • 地方当局:管轄範囲内で、申告物質に対して追跡管理を行なったり、リスク管理措置及び環境保護部から発行する証書・行政規定に対して管理したりします。監督者としての役割を果たしています。
- 試験機関:「弁法」に基づく物理化学的特性、毒性学試験、生態毒性学試験の実施を担当します。「弁法」によりますと、規定の資格・条件を満たす中国国内または国外の研究機関はいずれ申告データを提供することができますが、一部の生態毒性試験データについては、環境部が認定する中国国内の試験機関(現時点で11ヶ所)から提供されるものではなければ認められません。
- 申告者:中国国内における新規化学物質の製造者・輸入者、または新規化学物質を中国に輸出する非中国系企業(以下は「非中国系輸出者」と言う)です。
- 代理人:非中国系輸出者により任命され、EU REACHの「唯一の代理人」と類似する者です。「現地代理人」または「唯一の代理人」とも呼ばれます。(以下「OR」という)
影響を受ける企業
中国で製造・輸入される新規化学物質は、中国市場に進出する前に登録センターに申告を行うことが義務付けられます。登録証を取得していない企業は、化学物質を製造または輸入することが禁止されます。
- 中国国内の製造者・輸入者は直接新規化学物質申告を行うことができます。
- 非中国系輸出者は直接申告を行うことが許可されておらず、ORを指定し、代表として申告を行うことが必要となります。また、香港、マカオ、台湾系の企業も非中国系申告者とみなされます。
EU REACHと同様、ORは非中国系企業の申告を完了させる義務のほか、登録後の義務も果たさなければなりません。国外サプライヤーの申告義務を軽減させるために、環境部は中国国内の輸入者からの申告を許可することにしています。
指定試験機関
新規化学物質申告を行うための資料について、基本的に中国国内または国外の試験機関から提供するデータが両方とも承認されることになっていますが、環境部第7号令第10条の3では、「『新規化学物質環境管理弁法』に基づく通常申告の生態毒性試験報告書は、環境部が認可する中国国内(大陸)試験機関が作成するデータを提供しなければなりません」と強調しています。
非中国系試験機関は、所在国の審査を通過するものか、またはアメリカのGLP基準を満たすものではなければなりません。一方、中国国内の試験機関については、より厳しい条件が求められており、下記資格・証明書を取得しなければ認められません。
国内研究機関 | 分類 | 資格・証明書 |
物理化学的データ | 中国合格評定国家認可委員会実験室認可 | |
中国国家認証認可監督管理委員会国家計量認証 | ||
農業部農薬優良試験室(GLP)認証 | ||
毒性学的データ | 国家食品薬品監督管理局薬物非臨床実験GLP認証管理 | |
衛生部化学品毒性試験鑑定機構化学品毒性鑑定実験室条件及び労働準則 | ||
中国国家認証認可監督管理委員会が認可する優良試験室規範(GLP)適合性声明 | ||
生態毒性データ | 環境保護部が指定する試験機関(11ヶ所) |
「弁法」に基づく指定試験機関の資格について、国内だけではなく、国外の申告者も非常に関心を持っています。指定試験機関に関する詳細内容グローバルサイトに揚げるQualification Requirement of Testing Institutes under China NCSN(別販売)をご参照ください。
生態毒性試験データが認可される試験機関のリストは環境保護部のホームページで掲示されています。現時点では、「弁法」に基づき環境部により認定された生態毒性試験データを提供する資格を有する試験機関は11ヶ所しかありません。そのうち、環境保護部2012年第77号公告で発表した試験機関が8ヶ所、環境保護部2014年第5号公告で承認された試験機関が3ヶ所あります。
表 5. 環境部が認可した生態毒性試験を実施する資格を有する試験機関リスト
番号 |
中国語名称 |
英語名称 |
日本語名称 |
適用範囲 |
環境保護部2014年第5号公告発表分 |
環境保護部2015年第4号公告発表分 |
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1 |
上海市检测中心生物与安全检测实验室 |
Shanghai Academy of Public Measurement |
上海市検測中心生物及び安全検測実験室 |
通常申告4級 |
Y |
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2 |
沈阳化工研究院安全评价中心 |
Shenyang Research Institute of Chemical Industry |
沈陽化工研究院安全評価センター |
通常申告4級 |
Y |
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3 |
南京环境科学研究所国家环境保护农药环境评价与污染控制重点实验室 |
MEP-approved Key Laboratory for Environmental Evaluation and Pollution Control under Nanjing Institute of Environmental Science |
南京環境科学研究所国家環境保護農薬環境評価及び汚染管理重点実験室
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通常申告4級 |
Y |
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4 |
上海市环境科学研究院环境监测实验室 |
Shanghai Academy of Environmental Sciences |
上海市環境科学研究院環境監測実験室 |
通常申告3級 |
Y |
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5 |
广东省微生物分析检测中心生态毒理与环境安全实验室 |
Guangdong Detection Center of Microbiology |
广東省微生物分析検測センター生態毒理及び環境安全実験室 |
通常申告3級 |
Y |
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6 |
江苏衡谱分析检测技术有限公司 |
Jiangsu Hope Analytest Inc |
江蘇衡譜分析検測技術有限会社 |
通常申告1級 |
Y |
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7 |
苏州西山中科药物研究开发有限公司 |
Suzhou xishan Zhongke Drug R&D Co., Ltd |
蘇州西山中科薬物研究開発有限会社 |
通常申告1級 |
Y |
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8 |
中国环境科学研究院中国环境保护部化学品生态效应与风险评估重点实验室 |
環境保護部-approved Key Laboratory of Ecological Effect and Risk Assessment of Chemicals under Chinese Research Academy of Environmental Sciences |
中国環境科学研究院中国环環境保護部化学品生態効応及びリスク評価重点実験室 |
簡易申告 |
Y |
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9 |
上海化工研究院检测中心 |
Shanghai Research Institute of Chemical Industry Testing Center |
上海化工研究院検測センター |
通常申告3級 |
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Y |
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10 |
浙江省农业科学院农产品质量标准研究所 |
Institute of Quality Standards for Agricultural Products, Zhejiang Academy of Agricultural Sciences |
浙江省農業化学院農産品質量標準研究所 |
通常申告1級 |
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Y |
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11 |
北京协和建昊医药技术开发有限责任公司 |
Institute of Materia Medica, Chinese Academy of Medical Science & Pecking Union Medical College (IMM) |
北京協和建昊医薬技術開発有限責任会社 |
簡易申告 |
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Y |
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12 | 贵州省分析测试研究院 | Guizhou Academy of Testing and Analysis | 貴州省分析測試研究院 | 通常申告1級 | Y | ||
13 | 苏州华测安评化学品技术服务有限公司 | CTI CSERC (Suzhou) Co., Ltd. | 蘇州華測安評化学品技術サービス有限公司 | 簡易申告 | Y |
「中国現有化学物質名録」( IECSC)
「中国現有化学物質名録」(IECSC)は、1992年1月1日から2003年10月15日まで中国国内で製造、加工、販売、使用または輸入されていた全ての既存化学物質が収載されています。「中国新化学物質環境管理弁法」によりますと、IECSCに収載されていない化学物質は新規化学物質とみなされます。2013年1月30日、中国環境保護部は2013年版「中国現有化学物質名録」を公表しました。2013年版IECSCは合計45,612物質が収載されており、そのうち、完全に情報が公開されたものは42,342 物質あり、企業秘密を理由として中国語、英語の一般名とシリアル番号しか公開されていないものは3,270物質あります。また、37,126物質はCAS番号が付与されており、CAS番号が付けられていない8,486物質については、CAS番号のかわりにシリアル番号で表示されることになりました。一方、特定の化学構造式を有するものは31,088物質で、特定の化学構造式がないものは4,524物質となります。環境部登録センターの統計によりますと、2010年版IECSCは合計45,602物質が収録されており、そのうち、秘密取扱いとされたものは3,166物質あります。
2013年版「名録」は2010版「名録」発行以降の最新版です。「現有化学物質名録への追加訂正申請を廃止する公告」(環境保護部通知(環弁函[2011]1366号))が発行された前に追加訂正された化学物質の他、一部の新規化学物質も2003年版「新規化学物質法」(旧国家環境保護総局第7号令)に基づき「名録」に収載されていました。混乱や、不要な登録を避けるため、「名録」の総合検索を申請し、関連物質が依然として新規化学物質と見なされているかどうかを確認する必要があります。
「中国現有化学物質名録」検索
図3 - 「現有化学物質名録」検索
「中国現有化学物質名録」検索――「名録」は化学物質が「弁法」に基づく新規化学物質かどうかを判断するための根拠となっており、中国市場に進出する前に、関連製品が「名録」に収載されているかどうかを確認することが重要です。
「名録」は、従来は公表されないことになっていました。非機密物質は無料オンライン検索ができていましたが、これ以上の詳細情報を調べるには、他の検索ソフトウェアを購入する必要があります。2013年版「名録」フルバージョンを一般に向けて公開したと同時に、登録センターはオンライン検索サイトを終了することにしました。Chemlinkedは2013年版「名録」をChemLinked名録検索ツールに導入したため、ご利用者の方は化学物質のCAS番号または英語・中国語のフルネームで物質に関す情報を検索することができます。しかし、一部の化学物質は企業秘密の理由で検索できないようにされています。そのため、オンライン検索で条件と一致した結果が出なかったとしても、当該物質が中国国内の新規化学物質であると判断することができません。この場合については、登録センターに総合検索を申請することを推奨します。手数料は1物質につき600元(約9万5千円)です。
2013年版「現有化学物質名録」ソフトウェア
登録センターは2013年2月7日、名録ソフトウェアのスタンドアロンバージョンを更新した。ソフトウェアの料金は8,500元(約14万円)で、アカウントがアクティブ化された日から2年間内は無料更新することが可能です。当該ソフトウェアは、CAS番号、化学名または構造式で化学物質を検索することができるほか、2013年版「名録」のPDFバージョンより詳しい情報を調べることが可能です。すでに規定料金で2009年・2010年バージョンを購入した方については、2013年版「名録」を無料更新することができます。
「現有化学物質名録」の増補(追加訂正)
環境保護部により発行された「現有化学物質名録への追加訂正申請を廃止する公告」(環境保護部通知(環弁函[2011]1366号))によりますと、2013年10月15日前に中国市場で流通していた物質を「名録」へ収録する申請は2011年11月18日付で終了することになります。
当該公告の発表前、2003年10月15日以前に中国で製造または使用されていたことを証明できる証拠のある化学物質は、「弁法」の要求に従わず、試験データを提出せずに「既存化学物質」として「名録」への収載を申請することが可能です。
しかし、2011年11月18日以降は、「第7号令」の規定によりますと、化学物質を「名録」に収録する申請を行う場合、化学物質は2003年前に製造・使用されていたかどうかに関わらず、全て「弁法」に基づく手続きを行わなければなりません。
環境保護部は「名録」の追加訂正について、実施するための必要資料は非常に複雑で、データの信頼性も確認が難しいとして、「名録」の追加訂正を中止することになりました。登録センター責任者聶氏への取材によりますと、追加訂正手続きは将来に再開する可能性は極め低いと予測されます。
新規化学物質の「現有化学物質名録」への編入
図4 -新化学物質の「現有化学物質名録」への編入
通常申告にて登録証明証を受領した申告者は、取り扱う化学物質の環境管理分類に基づき、「名録」に収載するタイミングを確実に把握しなければなりません。
注意:簡易申告または科学研究届出申告にて登録された物質は、「名録」に収載されないことになっています。
一般類新化学物質:通常申告で登録された化学物質は、生産または輸入された初日から5年間経過後、「名録」に収載されることになります。
危険類化学物質または重点環境管理危険類化学物質:当該種類の化学物質について、通常申告で登録を行うことが義務付けられるほか、登録証所持者が生産または輸入された初日から5年間を満たす6ヶ月前に、全ての活動状況を登録センターに提出することが求められます。その後、評議審査委員会は化学物質の危険有害性に対して評価を行い、環境保護部は評議審査委員会の評価結果に基づき、物質を「名録」に収載するかどうかを判断することになります。
Fig. 5 - Report of Inclusion of Notified New Chemical Substance into Iecsc(Trial)
「第7号令」に基づき登録された物質のほか、「第17号令」に基づく新規化学物質も「名録」に編入される機会があります。「環境保護部2010年第123号通告」は「第17号令」に基づく登録証を取得した化学物質について、登録証は化学物質が「名録」に収載されるまでに有効とすると定めています。「第17号令」に基づく新規物質を「名録」に編入する申請を行うには、生産また輸入された5年目の1カ月以内に登録センターに活動報告を提出する必要があり、多くの情報や補足資料も必要となります。「第17号令」に基づく新規化学物質を「名録」に追加する手続きはまだ発表されていませんが、参考としては図5をご参照ください(注意:正式バージョンに変更があると予測されます)。
現在、既存化学物質に対する管理要求は緩いため、「名録」に収載された化学物質は厳しい監督から免除されることができますが、中国の既存化学物質管理の仕組みでは、危険有害性を有し、「危険化学品目録」や「劇毒化学品目録」等に指定された新規化学物質については、厳しく管理されることになります。
「第17号令」に基づく新規化学物質について、関連ガイダンスが発表され次第、順番に「名録」に収載されることになります。一方、2015年が近づいているため、「第7号令」に基づく通常申告にて承認された新化学物質も「名録」に追加されることになります。登録センターにとって、条件を満たす新化学物質を「名録」に編入する手続きを急ぐことと、「名録」の更新による不要な申告を避けることは、近い将来に緊急対応が必要な課題となります。
対応方法
申告種類と手続き
「弁法」によりますと、申告は化学物質の製造・輸出・輸入の目的と数量によって、三種類に分けられます。
科学研究届出申告:
三種類の申告のうち、科学研究届出申告に対する要求は最も低いです。科学研究届出申告を行う際、次のいずれかに該当する新化学物質は、科学研究届出申告を行うことに適用します:
- 科学研究開発(R&D)を目的とし、製造・輸入量が0.1トン/年未満の場合
- 中国国内で生態毒性試験を実施するために輸入される新規化学物質の試験サンプル
簡易申告:
簡易申告は製造・輸入量が1トン/年未満の新化学物質に適用されます。また、簡易申告について、特殊な場合は4つあり、簡易申告(通常の場合)と比較して、データに対する要求がより簡単です。
- 通常の場合:
- 製造・輸入量が1トン/年未満の新規化学物質に適用されます。
- 特殊な場合:
- 中間体、または輸入のみに使用される1トン/年未満の新規化学物質;
- 低懸念ポリマー(LCPs)または新規モノマーが2%未満のポリマー;
- R&Dを目的とした0.1トン/年以上1トン/年未満の新規化学物質;
- プロセス又は製品の研究を目的とし、2年内10トン/年未満の新規化学物質。
通常申告
通常申告は製造・輸入量が1トン/年以上の新規化学物質に適用されます。また、化学物質は取扱量によって4つの等級に分けられます:
- 1級:1トン/年以上10トン/年未満の場合
- 2級:10トン/年以上100トン/年未満の場合
- 3級: 100トン/年以上1000トン/年未満の場合
- 4級:1000トン/年以上の場合
通常申告を行う際、登録センターに資料を提出する必要があります。提出された資料はまず完備性が確認され、その後、評議審査委員会が資料に対して評価を行います。最後に、環境保護部が承認するかどうかを判断します。申告用の資料は中国語で提出する必要があり、非中国語の場合は認証翻訳が求められます。
データに対する要求
図8 - 「弁法」に基づくデータに対する要求
「弁法」によりますと、申告物質は申告種類や取扱量によって、データに対する最低限要求も異なります。「弁法」に基づく試験は物理化学的特性試験、毒性学試験及び生態毒性試験があります。
科学研究届出申告(SRRN):最も簡単な申告であり、データに対する要求も最も低いです。
簡易申告:化学物質の性質及び特性によって、必要とされる生態毒性試験も異なります。例えば、有機物の場合、急速分解性試験が必要となり、無機物質の場合では、水生生物毒性試験が必要となります。しかし、簡易申告の特殊な場合については、生態毒性試験が不要となります。
通常申告:通常申告について、取扱量が多くなればなるほど、データに対する要求が厳しくなります。物理化学的特性試験は取扱量に関わらず、全ての化学物質で行う必要があります。試験項目は化学物質の物理的状態(固体、液体または気体)によって異なります。また、取扱量が高くなればなるほど、必要となる毒性試験や生態毒性試験の項目数も多くなります。例えば、4級の化学物質について、必要となる試験項目は2級の2倍以上となるほか、GHSに基づく分類と表示も必要となります。そのほか、リスク評価報告を提出することが求められる場合もあります。
申告種類別で必要となるデータのまとめは下表のようになります:
申告種類 | 基準 | 必要データ |
通常申告 |
1級:1-10 トン/年未満 4級:1,000トン/年以上 |
新規化学物質通常申告表 分類及び表示 リスク評価報告書 生態毒性学データ 毒性学データ 物理化学的特性データ 中国語SDS |
簡易申告 | 特殊の場合 | 新規化学物質簡易申告表 基本的な物理化学的特性データ |
通常の場合 | +生態毒性学データ | |
科学研究届出申告(SRRN) |
R&Dを目的とし0.1トン/年以上1トン/年未満の場合 試験用サンプルとして輸入される場合 |
新規化学物質科学研究届出表 |
表1. 物理化学的特性試験データ (取扱量問わずすべて必要):
物理的状態 (試験条件:20℃、101.3 kPa) |
データに対する最低限要求 |
気体 |
酸化性、自己発火温度、燃焼性、爆発性 |
液体 |
沸点 (°C)、密度 (kg/m3)、蒸気圧 (kPa、°C)、n-オクタノール-水分配係数(Log Pow)、n-水溶解度(g/L)、表面張力1 (N/m)、pH値、引火点 (°C)、酸化性、自己発火温度(°C)、燃焼性、爆発性 |
固体 |
融点(°C)、密度 (kg/m3)、n-オクタノール-水分配係数(Log Pow)、n-水溶解度(g/L)、粒度(μm)、酸化性、自己発火温度 (°C)、燃焼性、爆発性 |
その他 |
申告者は上記3態に対する要求に応じた試験データを提出しなければなりません。臨界点に近い化学物質については、有機溶剤での安定性及び分解特性に関する詳細情報が必要となり、該当する物質の臨界温度も計算しなければなりません。 |
表2. 必要毒性試験データ (等級によって異なります):
最低要求 |
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
急性毒性 |
● |
● |
● |
● |
28日間反復投与毒性試験 |
● |
● |
● |
● |
変異原性 |
● |
● |
● |
● |
90日間反復投与毒性試験 |
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● |
● |
● |
生殖発生毒性試験 |
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● |
● |
● |
トキシコキネティクス |
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● |
● |
● |
慢性毒性 |
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● |
発がん性 |
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● |
その他 |
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表 3. 生態毒性試験データ (等級によって異なります):
最低限要求 |
1級 |
2級 |
3級 |
4級 |
藻類成長阻害試験 |
● |
● |
● |
● |
ミジンコ急性遊泳阻害試験 |
● |
● |
● |
● |
魚類急性毒性試験 |
● |
● |
● |
● |
活性汚泥呼吸阻害試験 |
● |
● |
● |
● |
吸着/脱着性 |
● |
● |
● |
● |
分解性 |
● |
● |
● |
● |
ミミズ急性毒性 |
● |
● |
● |
● |
魚類14日間延長毒性試験 |
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● |
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種子発芽と根発達試験 |
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● |
● |
● |
生体蓄積; |
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● |
● |
● |
魚類慢性毒性試験 |
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● |
● |
種子発芽と根発達試験 |
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|
● |
● |
表4. 化学品登録センターが認可するデータソース:
データソース |
備考 |
試験機関による試験報告 |
推奨データソース: 試験機関の資格証明書の提出が必要 |
発表文献 |
文献のフルバージョンが必要; 文献の要約または抜粋だけでは認められません |
データベース |
データソースの詳細内容が必要 |
QSAR |
QSAR予測やread-across(類推)等は参考のみとします |
専門家意見 |
専門家意見は認可します |
優良試験所基準(GLP)適合性
「化学品試験合格実験室管理弁法は 新規化学物物質登録に基づく実験を行う資格を有する実験室に向けた管理方法や申請手続きなどの内容が含まれます。環境部が認可した国内試験機関は毎年1月に年度報告を提出するほか、定期検査と不定期検査を受けることになります。
中国において、実験室に関する標準は主に優良試験所基準(GLP)に関するOECD原則を採用して作成されたものです。2012年、下記4つの優良試験所基準に関する草案が環境部により発表されました:
- 化学品試験合格実験室ガイドライン(意見募集稿)(HJ/T 155 – 20XX)
- 化学品試験合格実験室適合性審査ライドライン(意見募集稿)
- 化学品試験合格実験室検査及び審査ガイドライン
- 化学品試験合格実験室審査報告編集ガイドライン
環境部はGLPに対し、動的な管理を実施しています。環境部第7号令によりますと、承認された試験機関は監査制度が設けられており、3年に1回環境部による監査が行われることになります。2009年の適合性審査の開始からすでに3年間が経過しました。3年前と比較して、審査項目は従来の20項目から120項目へ大幅に増加し、審査範囲も広く拡大されました。2004年版の「化学品試験合格実験室ガイドライン」は大まかな枠組みしかありませんでしたが、2012年版のガイドライン (HJ/T 155-20XX) では多くのOECD原則が採用され、中国当局が積極的に国際調和を図っていることがみてとれます。ガイドラインの草案によりますと、審査に受かるためには、試験機関は技術力審査及び現場検査を通過しなければなりません。GLP適合性審査が不合格とされる試験機関については、資格が取り消されるおそれがあります。
登録後の義務
新規化学物質は登録種類によって、付与される義務が異なります。通常申告で登録された新規化学物質は専門家パネルの評価に基づいて、「一般化学物質」、「危険類化学物質」及び「重点環境管理化学物質」の3種類に区分されます。
図9 -登録後の義務
- 科学研究届出申告の場合、下記義務が課せられます:
- 1. 専門施設内で専門要員の指導のもとで申告物質を管理すること
- 2. 廃棄する際は危険廃棄物の関連規定に則って処理すること
- 簡易申告の場合、下記義務が課せられます:
- 1. 来年度の詳細計画を提出すること
- 2. 新規化学物質の申告書類及び生産、輸入活動の状況等の関連資料を10 年以上保存すること
- 通常申告の場合、下記義務を果たさなければなりません:
- 一般的な新規化学物質(一般類)の場合:
- 1. SDSに新規化学物質の危険有害性を明記し、かつ加工・使用者に危険有害性に関する情報を伝達すること
- 2. 登録証に規定されているリスク管理措置を講じること
- 3. 登録センターに化学物質の初回活動報告表を提出すること
- 4. 新規化学物質の申告書類及び生産、輸入活動の状況等の関連資料を10 年以上保存すること
- 5. リスク管理措置を講ずる能力を持たない加工・使用者に登録された新規化学物質を譲渡しないこと(第33条)
- 6. 6. 登録された新規化学物質が新しい危険有害性を有することを把握した場合、直ちに登録センターに当該化学物質の危険有害性に関する新たな情報を報告すること
- 危険類化学物質(危険類)の場合、上記6つの義務のほか、下記2つの義務が付けられることになります:
- 7. 登録センターに登録された新規化学物質の前年度活動状況に関する情報を提出すること
- 8. 国務院第591号令及び他の新規化学物質に関する業務や川下ユーザーに適用する規制に則ること
- 重点環境管理危険類新規化学物質(重点環境管理危険類)の場合、上記8点の要求及び下記3点の要求が求められます:
- 9. 関連する危険廃棄物処理規定及び環境に対する影響を防ぐための管理措置に従うこと
- 10. 登録された新規化学物質の流通情報を登録センターに提出すること
- 11. 登録された新規化学物質の来年度の詳細計画を提出すること
- 一般的な新規化学物質(一般類)の場合:
コスト
申告によるコスト:
「弁法」を対応するためのコストは、行政手数料、試験費用及びコンサルティング料金の3部分で構成されます。
図10 - 申告によるコスト
行政手数料: 現行規制によりますと、「弁法」に基づく登録申請、評価または登録証明書の発行等の業務については、行政手数料が課せられます。また、登録センターに化学物質が新規化学物質に該当するかどうかを確認するのに600元かかります。
コンサルティング料金: コンサルティング料金はOR――主に資料の準備、事後申告義務の履行、またはリスク評価報告及び年度報告の作成などを代表者として行う者に支払うことになります。
試験費用: 申告企業は登録用資料による費用を資本投資に盛り込む必要があります。特に試験データについて、大量の資金が必要とされます。行政手数料やコンサルティング料金と比較しても、試験費用は総コストの大きな割合を占めています。化学物質の取扱量が多くなればなるほど、必要試験項目も多くなります。しかし、一部の試験項目はQSAR等の予測を用いて免除されることができます。例えば、通常申告において、活性汚泥呼吸阻害試験の結果によって、ミミズ急性毒性試験または種子発芽と根発達試験の2つの生態毒性試験が免除される場合があります。
簡易申告(通常の場合)または通常申告の申告者は、国内の試験機関から提供する生態毒性試験データを提出する義務が課せられます。新化学物質登録に向けた資料を提出する予定のある企業について、試験費用が継続して上昇するため、来年度の規制に対応するための予算がより多く組まれる見込みです。環境部が承認した3つの試験機関から収集した実績によって、今後、1つの生態毒性試験項目は3,000~30,000元(約5~50万円)ほどの料金が課せられ、2012年度と比較して約30%~40%上昇する見込みだということです。中国当局は、生態毒性試験によるコストの増加が大幅な値上げの原因だとしています。
図11 - リスク評価
しかしながら、OECD試験機関で行われる生態毒性試験の費用と比較すると、中国国内の方が割安です。一方、中国はOECD加盟国ではないため、中国環境部が認可した試験機関から提供する生態毒性試験データは他の国の化学物質に関する規制、例えばEU REACH、USA TSCAなどでは認められません。
リスク評価
中国新規化学物質登録制度では、通常申告の場合、リスク評価報告の提出が義務付けられます。リスク評価報告のフォーマットは中国環境部が2010年9月に発行したガイダンスに記載されています。当該ガイダンスはリスク評価報告の主要内容――分類及び表示、有害性評価、ばく露評価及びリスク特徴について詳しく説明しています。これはEU REACHに基づく化学物質安全性評価(CSR)と類似しています。しかし、EU REACHにおいて製造量が10トン/年以上の化学物質がCSRを提出する必要がある点とは異なり、「弁法」では、製造量・輸入量が1トン/年以上の化学物質を対象にしてリスク評価を行う義務を課すことにしています。
[中国新化学物質環境管理弁法]に関するよくあるご質問
2013年6月9日、中国環境部化学品登録センターが公式サイトで新化学物質登録に関するFAQを更新しました。登録者から最も多く問い合わせのある124件が公式サイトに掲示されています。そのうち、8件が今までの質問についての追加回答です。
中国語版FAQはこちらをクリックしてください。
英語版のFAQ(Q1~Q82)はこちら(別販売)からダウロードしてください。
Q1~ Q82の英語版(PDFバージョン)が入手可能です。最新版をご希望の方は下記連絡先までご連絡ください:Nadine@ChemLinked.com。また、新化学物質登録に関するあらゆるフィードバックはお気軽にご連絡ください。収集した意見・コメントは弊社より環境部に提出致します。
[中国新化学物質環境管理弁法] の実績
統計報告見本
現時点で、中国環境部により承認された登録申請は、科学研究届出申告が2,265件、簡易申告が9.387件、通常登録が99件(意見募集中1件を含める)となります。また、2013年前半期、登録証所持者の名称変更による登録変更申請が4件承認されました。中国環境部が統計するデータは環境部公式サイトに掲示されています。グローバルサイトのスタンダード・コーポレートメンバーに向けた統計報告(PDFバージョン)は こちらをクリックしてダウロードしてください。一般メンバーに向けた簡易版は こちらをクリックしてダウロードしてください。
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